仙台市若林区の診療所  医療法人社団太陽会 仙台在宅支援たいようクリニック 【訪問診療・往診・予防接種】
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 第155話 新型コロナウイルスに備えるために−よく噛んで食べよう!
投稿:院長

外出の自粛で、自宅で過ごす時間が増え、運動不足と重なり食生活にも気を遣うことがあるかと思います。

 

そこで、同じ食事を食べるにしても、もっと健康的に食べる方法はないだろうかと考えみたところ、やはり「一口一口よく噛むこと」が大切ではないかと感じました。

 

戦前の日本人は、一食につき1465回噛み、22分かけて食事をしていたそうですが、現代の日本人は一食につき620回に減少し、所要時間はわずか11分だそうです。

 

昔は「よく噛んで食べなさい」と言われたものですが、今は食感やのど越しが重視され、さほど噛まなくてもおいしく飲み込めてしまうような食べ物が流行し、噛むことを重視しなくなった気がします。

 

食事を噛んで飲み込むまでの一連の動作を「咀嚼(そしゃく)」といいますが、咀嚼にはどんな効果があるのでしょうか?

 

【咀嚼が口腔内の免疫に果たす役割】

最近の研究では、噛むことにより歯肉にかかる機械的な圧力がきっかけとなり、Th17細胞というリンパ球が増え、口腔内の免疫を活性化するメカニズムが明らかになりつつあります。このTh17細胞が、さまざまなサイトカインを分泌して白血球を活性化・動員したり、抗菌作用のあるたんぱく質の分泌を促進して、口腔内の感染に対する司令塔のような役割を果たします。

 

しかし、IL17細胞は、歯周病の原因となる代表的な細菌であるジンジバリス菌などに対して過剰反応を起こすと、周辺の骨破壊や関節リウマチの発症にも関係することが明らかにされつつあります。

 

したがって、IL-17細胞を味方につけるためには、しっかりと歯周病のケアを行いながら健全な咀嚼刺激を与え続けることが大切になります。

 

【唾液や咀嚼により分泌が促させるホルモン】

よく噛んで食べると唾液の分泌が促されますが、唾液中の成分や噛むことで分泌が増えるホルモンの中で、私達の健康に欠かすことができないものについて整理したいと思います。

 

●歯の修復に働く唾液成分

スタテリンは、虫歯により腐食されたエナメル質を修復(再石灰化)する働きがあります。

 

●消化を助ける唾液成分

ムチンは、食塊を包み込む働きがあり、アミラーゼはでんぷんを糖に分解する働きがあります。


●味覚を助ける唾液成分

ガスチンは、亜鉛と結びついて舌の味覚をつかさどる味蕾(みらい)細胞を刺激します。

 

●口腔内の免疫に関わる唾液成分

リゾチームは、細菌の壁を分解する働きがあります。

ラクトフェリンは、ウイルスやピロリ菌と接着する働きがあります。

IgAは、粘膜に分泌されている抗体で、ウイルスなどを中和する働きがあります。

 

●発がん物質の抑制に関わる唾液成分

ラクトペルオキシダーゼやカタラーゼは、食事中の発がん物質や活性酸素を30秒で中和する働きがあります。

 

●脳の機能に関わるホルモン

時間をかけてよく噛むと、十二指腸からコレシストキニンが分泌され、脳の短期記憶をつかさどる海馬の活性化させます。また、咀嚼に関わる筋肉の規則的な運動は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌を促し、リラックス効果を引き出します。

 

●肥満の予防に関わるホルモン

時間をかけてよく噛むと、脂肪細胞からレプチンの分泌が促され、脳の満腹中枢に作用して食欲を抑制したり、脂肪細胞の分解を促進します。

脳内からヒスタミンの分泌が促され、脳の満腹中枢に作用し食欲を抑制します。

 

●糖の代謝に関わるホルモン

時間をかけてよく噛むと、GLP-1などの消化管ホルモンが分泌され、血糖値を低下させます。

 

ここに挙げたものは代表的なものですが、それにしても唾液というのは様々な働きがあるものです。たった1回の食事でも、よく噛んで食べないともったいない気がしませんか?

 

次回は、実際に、咀嚼の回数や咀嚼機能が人の健康にどのような影響を与えているのか、様々な臨床研究の結果について触れてみたいと思います。


※ここに記載された内容について、電話による個別の健康相談などは行っておりませんので、ご了承下さるようお願い申し上げます。



2020年4月10日(金)

 第154話 感染症に対する解熱剤の使用について(改変)
投稿:院長

3月6日に、感染症に対する解熱剤について書いたのですが、関心が高く、もう一度、新たな知見も加えて整理してみました。

 

ここでは、熱を下げる方法として、1)クーリングを行う、2)アセトアミノフェン(カロナール、アンヒバなど)を使用する、3)非ステロイド系消炎鎮痛薬NSAIDs(ロキソニン、ボルタレンなど)を使用する、に分けて考えたいと思います。

 

●重症感染症の患者に対するクーリング 

敗血性ショックの患者200人に対して、積極的にクーリングを行った群と行わなかった群に分けて行われた二重盲検ランダム化比較試験では、積極的にクーリングを行うと、行わなかった群に比べて14日後の死亡率が有意に低下したと報告されています(死亡率はそれぞれ19%と34%)。

 

日本と韓国の病院の集中治療室に入院した敗血症の患者(細菌学的に診断された患者と、臨床的な基準を満たした感染症の患者が含まれる)606人に対する観察研究では、クーリングは患者の経過に影響を与えなかったと報告されています。

 

●重症感染症の患者に対する解熱剤

先の606人の敗血症患者に対する観察研究では、敗血症患者にNSAIDsまたはアセトアミノフェンを使用した場合、28日後の死亡率がいずれも増加したと報告されています(調整オッズ比はそれぞれ2.612.05)。

 

集中治療室に入室している重症感染症の患者700人に対してアセトアミノフェンを使用した群と使用しない群に分けて行われた二重盲検ランダム化比較試験では、アセトアミノフェンの使用は、患者の経過に影響を与えなかったと報告されています

 

●インフルエンザの患者に対する解熱剤

厚生省の研究班が、小児のインフルエンザ脳炎・脳症とジクロフェナク(ボルタレン)の使用による死亡率との関係を示しており、日本小児科学会では、小児に対して解熱剤を使用する場合はアセトアミノフェンが適切としています。

 

80人の成人インフルエンザ患者に対してアセトアミノフェンの効果を調べた二重盲検ランダム化比較試験では、ウイルス量、症状のスコア、症状が改善するまでの期間のいずれの項目においても、アセトアミノフェンを使用した群と使用しない群では有意差を認めなったと報告されています。

 

現在、インフルエンザの成人患者を対象に、解熱剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)の使用とその後の経過を調べたもっと大規模な研究が実施され、その結果が待たれるところです。

 

●重症感染症における発熱と予後の関係

先の606人の敗血症患者に対する観察研究では、最高体温が37.5℃〜38.4℃の患者群の死亡率が最も低く、最高体温が38.5℃以上の患者群では36.5℃〜37.4℃の「平熱群」と比べて死亡率に有意差を認めなかったという結果でした。そして、36.5℃未満の「低体温群」では最も死亡率が高く、66%の死亡率であったと報告されています。

 

●発熱が免疫に与える影響を調べた基礎研究

ある日本の研究では、免疫細胞の一種で異物を貪食するマクロファージは、温度センサーを持っていて、37℃付近からマクロファージの活性が高まり、人の発熱域である38.5℃でさらに強く活性化することが明らかになっています。

 

また、別な日本の研究でも、白血球の1種である好中球は、活性酸素を使って病原体を不活化しますが、37℃付近から高温域で、活性酸素を作るための水素イオンチャンネルの供給が増えることが明らかになっています。

 

いずれも、病原体が侵入した時の発熱は、免疫細胞を活性化するための「生理的な手段」と考えてもよさそうです。

 

一方、昨年、東北大学から発表された研究では、1)40℃という高熱は、37℃に比べてインフルエンザウイルスの感染がなくとも細胞障害が生じること、2)インフルエンザの感染がある場合は、40℃という高温は37℃に比べてより細胞障害が生じることが明らかになりました。

 

ということは、ある程度の発熱は(38.5℃くらい)、感染症に対する白血球の働きを活発にする生理的な反応として許容すべきと考えられますが、40℃にもなると、もはや細胞にダメージが来るような非生理的な発熱と考えてもよさそうです。

 

●感染症に対する解熱剤の副作用

NSAIDs、アセトアミノフェンともに低血圧のリスクが指摘され、さらにNSAIDsでは、腎機能障害(尿量の有意な減少)のリスクが指摘されており、感染症に対して解熱剤を使用した場合、低血圧や臓器血流の減少に配慮する必要があります。

 

●感染症による発熱に対する処置

ここで紹介したものは、重症敗血症とインフルエンザが混在しているのですが、以上の結果から、38.5℃くらいまでなら「免疫を活性化させる最も好ましい発熱反応」として様子をみることにして、38.5℃を超えて苦痛を伴う場合や、39.5℃を超えて40℃に迫るような高体温では、1)積極的にクーリングを行う、2)解熱剤を使用する場合はアセトアミノフェンを使用する、3)非ステロイド系消炎鎮痛薬は避けるべき、と考えられます。そして、解熱剤を使用する場合は、急速に平熱に持っていくようなことはせずに、熱が38℃付近に収まるようにゆるやかに解熱することが好ましいと言えます。

 

発熱に対して、保護者や介護者の心配のために解熱剤を使用していることが少なくありません。

 

安易な解熱剤の使用について、もう一度考えてみるべき機会なのかもしれません。

 

※ここに記載された内容について、電話による個別の健康相談などは行っておりませんので、どうかご了承下さるようお願い申し上げます。


2020年4月8日(水)

 第153話 新型コロナウイルスに備えるために‐どのような気持ちで過ごすべきか?
投稿:院長

新型コロナウイルスの感染者の急増で、不安な気持ちで過ごしている方が多いと思いますが、人の性格や心理が免疫にどのような影響があるのか調べてみました。

 

人の性格を表現する際に、明るい人とか暗い人とか、いろんな尺度がありますが、最近は5つの因子で説明できるとした「性格5因子論」が定着しつつあり、ビッグ5と呼ばれています。

 

その5つの因子とは、神経症傾向、外向性、開放性、協調性、誠実性です。

 

神経症傾向とは、外部刺激に敏感に反応して情緒不安定になりやすい傾向を表す要素です。極端すぎると、ストレスにより不安や緊張感が高まり過ぎることがあります。

外向性とは、外部に強い刺激を求め、活動的で社交的な傾向を表す要素です。極端すぎると、無謀な面がみられることがあります。

開放性とは、遊び心があり、新しいものに好奇心を持って近づくような傾向を表す要素です。極端すぎると、社会から逸脱し、夢想を追い求めてしまうことがあります。

協調性とは、共感性や思いやりをもって人と協調関係を結ぶ傾向を表す要素です。極端すぎると、他人に気を使いすぎて人に同調し過ぎたり、追従してしまうことがあります。

誠実性とは、目的をもって計画的に物事をやり抜こうとする傾向を表す要素です。極端すぎると、完璧主義的で失敗を許容できなくなることがあります。

 

各要素は誰でも持っていますが、その強さは一人一人で異なっており、それが総合的に組み合わさって各人の性格特性が判断されます。

 

現在、体の中で発生する微小な慢性炎症が、老化、認知症、がん、脳梗塞、虚血性心疾患、うつ病などの様々な疾患に関係していることが明らかとなっていますが、このビッグ5と慢性炎症の関係を調べた研究が報告されています。

 

6以上の研究を解析した調査では、ビッグ5のうち、誠実性が慢性炎症の指標であるCRPIL-6の数値の減少に強く関係し、他の因子と慢性炎症の数値の間に関係は認められなかったとしています。

 

また、121人の成人を対象として行われた調査でも、誠実性が慢性炎症に関わる遺伝子の発現を減少させ、その反対に、外向性はこの遺伝子の発現を増加させていたとしています。

 

また、この研究では、ビッグ5と抗ウイルス抗体に関係する遺伝子発現との関係も調査していますが、その関連は認めなかったとしています。

 

以上の結果から、予想外の出来事やうまくいかないことがあったとしても、今できることは何なのかよく考え、派手なことではなく、地道に根気よく責任をもって行う性格の方が、長期的には人の健康に有利に働くことを示しています。

 

また、外出が制限された環境の中でどう過ごせばよいのか、笑いと免疫の関係で調べてみました。

 

現在まで、漫才、落語、お笑いビデオ、コメディ映画などの笑いの刺激の後に、唾液中のIgA抗体価の上昇、免疫細胞の一つであるナチュラルキラー細胞(NK細胞)活性の上昇、免疫力のバランスの指標であるCD4/CD8比の改善、脳内麻薬の一つであるβエンドルフィンの上昇、ストレスホルモンであるコーチゾールの低下などの変化があったという研究結果が数多く報告されています。

 

ただ、研究により笑いの定義や尺度にばらつきがあり単純に比較できないこと、いずれも少人数での研究で、笑いの刺激の前後でこれらの数値に変化はなかったとする報告もあること、笑いの刺激は短期的で数値の変化も一時的なもので、実際に感染症の予防を始めとした長期的な効果については明らかにされておらず、今後さらに検証が必要だと思います。

 

3月に、新型コロナウイルス肺炎により志村けんさんがお亡くなりになりましたが、追悼の意味を込めて、子供の頃に楽しんだ「8時だよ全員集合」「ドリフの大爆笑」「バカ殿様」を懐かしく視聴してみたのですが、しんみりとするより大爆笑の連続でした。

 

外出の自粛が求められていますが、こんな時こそ自分を見失わず、時にはお笑いの力を借りて気分転換してはどうでしょうか?

 

きっと、人生をかけて笑いを追求してきた志村さんがそれを一番に望んでいるに違いありません。


2020年4月4日(土)

 第152話 新型コロナウイルスに備えるために−学校は再開すべきなのか?休校のままにすべきなのか?
投稿:院長

日本でも新型コロナウイルスの感染者が急増し、政府の対応に注目が集まっています。


227日、政府から全国の学校を一斉休校にするよう要請が出された際、その判断に賛否両論が巻き起こり、感染症の専門家の意見も分かれました。


新学期を迎えようとしている中で、これに対して絶対的な答えがない今、現時点で判明していることを一つ一つ一度検証してみたいと思います。


●小児の集団感染の報告は?

私が調べた限り、学校などの場所で小児同士の集団感染があったという報告は今のところ見当たりませんでした。

先の京都産業大学で起きたクラスターも、20代の学生が中心のようです。

新型コロナウイルスへの感染疑い、または感染が確定した18歳未満の小児2143人を集めた中国からの報告(報告A)でも、8割以上は家族内クラスターで感染し、学校などで感染したことは記載されていません。


●軽症なのは小児だけなのか?

小児のほとんどは無症状か軽症ということは盛んに報道されていますが、先の報告Aでも、小児感染者のうち無症状4.4%、軽症50.9%、中等症38.8%で、重症または危篤状態になった小児は5.9%でした。しかし、幼児以下の年齢では比較的重症化率が高く、1歳未満では10.6%、15歳では7.3%の小児が重症または危篤状態になったと報告されています。

一方、ダイアモンドプリンセス号の報告では、218日の時点でPCR検査が陽性となった乗員乗客531人のうち(このうち20歳未満は3名)、実に255人が無症状でした。

ということは、成人であってもかなりの人が無症状で、こういった無症状の人達が感染源になりやすいと言えそうです。


●小児は感染しにくいのか?

先のダイアモンドプリンセス号の報告では、19歳未満で乗船していた39人のうち、3人の感染が確認され(うち無症状が2人)、7.7%の感染率でした。この報告では、50歳以上では感染率が10%を超え、70歳以上では感染率が20%を超えていますが、7.7%という感染率は50歳未満の成人とほとんど変わらない数字でした。乗船していた人にすべて等しい感染機会があったとすると、小児も成人と同じように感染してしまうことを示唆しています。

また、米国と中国の研究者による共同調査では、中国で新型コロナウイルス肺炎に罹患した患者と濃厚接触のあった人の感染率を調べた結果、9歳以下7.4%、107.1%、206.1%、306.0%、404.9%、509.1%、6015.4%、709.7%で、9歳以下と10代は、40代以下の成人に比べて同等もしくはそれ以上の感染率を示し、これはダイアモンドプリンセスの結果とほぼ一致しています。

以上の結果から、小児は重症化しにくいものの、感染者と濃厚接触した場合は成人と同じように感染する可能性があるということを示唆しています。


●小児はどうして重症化しないのか?

最近、スウェーデンから出された論説では以下のような仮説を立てています。

1成人とコロナウイルスに対する免疫反応が異なるからではないか?

2小児の気道粘膜にありふれた他のウイルスの存在がコロナウイルスの増殖を抑制し、ウイルス間の相互作用により、小児では成人に比べてウイルス量が少ないのではないか?

3コロナウイルスが人に感染する際、侵入の起点になる肺のACE2受容体の発現が小児では少ないのではないか?

4小児はコロナウイルス肺炎の最重症型の一つである急性呼吸窮迫症候群(ARDS)になりにくいのではないか?

また、それ以外にも、小児は成人のようにコロナウイルス感染初期のリンパ球減少が認められず、感染後の免疫機能が保たれるためではないか、と複数から報告されています。

いずれも仮説の域を出ず、今後の検証が待たれるところです。


●小児は感染源になりうるのか?

中国で家族クラスターを起こした感染者を詳細に分析すると、小児から大人へ感染した可能性を示唆する報告もあり、そういったケースも「家族内クラスター」として一括りに報告されていることを知っておく必要があります。

また、症状が軽くても非常に多くのウイルスを保有していたという小児の報告もあり、小児では無症状であっても保有するウイルス量が多ければ、成人と同じように感染源になりうる可能性があります。

さらに、PCR検査で陽性と確認された感染者(成人ですが)では、咽頭よりも鼻腔でウイルス量が多いことや、糞便からのウイルスの排泄期間が最も長いことが報告されており、自分の身体的ケアが不十分な年齢になるほど、その保護者や周囲にいる小児の接触感染や糞口感染のリスクが増えることは十分に考えられます。

これを明かにするには、家族内クラスターや、日本で報告されている保育所でのクラスターについて詳細に分析していく必要があります。


●学校での感染拡大を防ぐ

先に示したデータの通り、感染者と濃厚接触しても50歳未満であれば、感染率が10%に達しません。つまり、年齢にかかわらず、多数の人の集まりを出来るだけ避けることによって感染拡大を防ぐことができるということです。

しかし、学校は規模の大きな人の集まりになりやすく、また濃厚接触が長期間続く場所になりやすいという環境であるということは間違いありません。


学校を再開するのか休校を継続するのか、政府や専門家の方の判断に委ねたいと思いますが、再開する場合であっても、専門家会議で示された感染拡大を防ぐ3原則、つまり「喚起の悪い密閉空間を作らない」「人が密集しない」「近い距離での会話や発声を避ける」ことが大切であることは何も変わりません。


2020年3月31日(火)

 第151話 新型コロナウイルスに備えるために−誰にでもできる腸活の可能性パート3
投稿:院長

今回は、過去の2回に続いて、「誰にでもできる腸活の可能性」と題して、プレバイオティクスについてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

●食物繊維とは

食物繊維について様々な定義が出されていますが、まとめると「人が消化したり吸収したりできない食物の総体で、3つ以上の単糖が結合した炭水化物」と言えるかと思います。かつて、食物繊維は、栄養価値がなく腸を素通して排泄されるだけという、食品としてとても低い扱いだったのですが、1970年代に大腸がんの予防効果が報告されてから、人体に対する様々な効果が発見され、現在は、糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素に加えて、第6の栄養素と位置付けられる場合もあります。

 

●食物繊維の分類

食物繊維は、発酵性の有無、水溶性の有無、粘性によって人体に与える効果が異なりますが、一般的には水に溶けるかどうかで水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類されることが多いようです。

【不溶性食物繊維】

水分含んで膨張し、腸壁を刺激して蠕動運動を促し、食物の通過時間を短くしてくれます。一般的に、不溶性食物繊維は、腸内細菌で分解されないことが多いのですが、一部は大腸の終わりの部位(下行結腸)で腸内細菌により分解を受けます。

不溶性食物繊維は、玄米、豆類、おから、ゴボウ、ひじき、サツマイモ、きのこ類などに数多く含まれています。

 

【水溶性食物繊維】

水を含んでゲル状になって腸壁に付着しやすく、多くは小腸の終わりから大腸の始めの部位(回腸から上行結腸)で腸内細菌により分解を受けます。

このうち、粘性の高い食物繊維には、大麦や燕麦に含まれるβグルカン、リンゴなどに含まれるペクチンなどがあり、これらは血糖値の急激な上昇を抑えたり、大腸がんの原因になる胆汁酸と結合するなどの働きがあります。

粘性の低い食物繊維は、特に腸内細菌により分解を受けやすく、イヌリン(このタイプには、アスパラガス、ニンニク、玉ねぎ、長ネギ、ニラ、小麦、バナナなどがあります)、レジスタントスターチ(いんげん豆、小豆、とうもろこし、さつまいも、長いも、じゃがいも、玄米、白米などがあります)、人工的に作られたデキストリンやポリデキストローズなどがあり、コレステロールを吸着したり、血糖値の急激な上昇を抑えるなどの働きが知られています。

 

●食物繊維とプレバイオティクスの関係について

「腸内に定着している細菌を活性化することにより、摂取した人の健康に有益な働きをする難消化性食品」であるプレバイティクスのほとんどは、腸内細菌により分解を受ける水溶性食物繊維に含まれることになりますが、その反対に、すべての食物繊維はプレバイオティクスとは限らないということになります。

 

●食物繊維やプレバイオティクスは善玉菌を増やすのか?

64の研究を分析した論文によると、食事から食物繊維を摂取しても便中のビフィズス菌や乳酸菌の菌数には影響を与えなかったそうですが、プレバイオティクスの中で、特に、フルクタンやガラクトオリゴ糖(母乳の成分にも含まれています)を摂取すると、便中のビフィズス菌や乳酸菌が有意に増加したと報告しています。したがって、フルクタンに分類されるイヌリン、フルクトオリゴ糖(フルクトールと結合してフルクタンになる)、ガラクトオリゴ糖などを含んだプレバイオティクスを摂取すると、腸内のビフィズス菌や乳酸菌を効率的に増やすことが期待できます。

 

●日本の商品について

日本の各メーカーでは、イヌリン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖を含む商品は、ビフィズス菌や乳酸菌が一緒に含まれている健康食品として発売していることが多いです。

砂糖は1gあたり4キロカロリーのエネルギー量ですが、フルクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖は1gあたり2キロカロリーと、砂糖の半分のエネルギー量になっています。

 

●プレバイオティクスの摂取量と摂取期間

先の64の研究を集めた論文では、1日5g以上摂取すれば、それ以上摂取してもビフィズス菌を増やす効果に違いがなかったと報告しています。

また、日本の研究で、1日8gのフルクトオリゴ糖を成人に2週間摂取させると、4日目から便中のビフィズス菌の増加が認められ、摂取中止後8日目には、増加したビフィズス菌が減少したと報告しています。

したがって、少なくとも1日5g8gのプレバイオティクスを摂取すると短期間で腸内のビフィズス菌を増やすことができますが、その効果を維持するには継続する必要があります。

 

「誰にでもできる腸活の可能性パート1」で触れたように、プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒に摂取する方が、単独で摂取するよりも感染症に対する免疫力の強化につながる可能性があります。

 

腸内細菌は、私たちの生命活動に大きな影響を与え、様々な病気の原因や予防に関与していることが近年の研究で明らかになっています。

 

プロバイオティクスやプレバイオティクスを使った「腸活」で、腸内細菌を心強い味方にしていきましょう!


2020年3月29日(日)

 第150話 新型コロナウイルスに備えるために−誰にでもできる腸活の可能性パート2
投稿:院長

前回は、プロバイオティクスとプレバイオティクスの感染症に対する効果について触れてみました。今日は、このうち、プロバイオティクスについてもう少し掘り下げてみたいと思います。

 

●善玉菌と悪玉菌とは?

善玉菌とは、腸内で人の生命活動に必要なビタミン類(ビタミンB1B2B6B12、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、葉酸(B9)、ビオチン(B7)、ビタミンK、ビタミンCなど)やホルモン(セクレチン、コレシストキニン、インクレチンなど)、身体の機能活動に必要な短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸など)、神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の産生に関わり、腸管の蠕動運動、消化吸収、代謝、感染防御など、人の健康に有益な働きをしている細菌群の一般的な総称です。このように、微生物が食品を分解して人にとって有益な働きをするものに変える作用を発酵と呼びます。

一方の悪玉菌とは、アンモニア、フェノール、インドール、硫化水素、アミンといった発がん物質を含む有害物質を産生する細菌群の一般的な総称です。発酵に対して、微生物が食品を分解して人にとって有害な働きをするものに変える作用を腐敗と呼びます。ただ、悪玉菌は、他の細菌が腸内の定着を防いだり、たんぱく質の分解をしたり、一部のビタミンを産生したりする役割も担っています。

善玉菌でも悪玉菌でもない、どっちつかずの細菌群を日和見菌(ひよりみきん)と呼びますが、近年、この日和見菌に分類されているクロスリジウム菌の産生する酪酸が制御性T細胞を活性化し、過剰な免疫反応をコントロールしていることが明らかとなってきました。

 

●乳酸菌とビフィズス菌の違い

どちらも乳酸を産生して腸内環境を酸性にすることにより、有害な細菌の増殖を抑えていますが、ビフィズス菌が産生する酢酸は、有害な細菌の活性を抑える働きが特に強く、大腸のバリア機能を高める働きがあります。

乳酸菌は酸素があっても生育できるので、人の腸内に限らず、外界の様々な場所(例えば、発酵食品や乳製品)に存在していますが、ビフィズス菌は酸素のない場所では生きていけず、生育場所はほぼ人や動物の大腸内に限られています。ここで、ビフィズス菌は酸素が苦手なのに、ヨーグルトにして大丈夫か?という素朴な疑問が生まれますが、ビフィズス菌ヨーグルトの表面はやはり酸素の影響を受けやすく、攪拌すると死滅する傾向が早くなるので注意が必要のようです。

また、ビフィズス菌は人の腸内の善玉菌のほとんどを占めているのに対し、乳酸菌の占める割合は、善玉菌のわずか0.1%以下だそうです。

 

●摂取したプロバイオティクスの定着率

乳児の腸内細菌は、その90%以上をビフィズス菌が占めますが、年齢とともにその割合は減少し、成人に達するまでに1020%の割合となり、高齢者になると5%以下に減少してしまうとされています。実は、善玉菌を増やそうとプロバイオティクスを摂取しても、そのほとんどは、すでに存在している腸内細菌との縄張り争いに勝てずに定着しないまま素通りしてしまうことがわかってきました。したがって、プロバイオティクスの持つ様々な効能は、その菌体成分や菌が産生する成分が腸管内を通過する際の作用によるものと考えられます。実際、一部の死菌であっても、その菌体成分が免疫を活性化させる作用があることがわかっています。プロバイオティクスは根気よく継続して摂取することが大切だということです。

 

●特定保健用食品と機能性表示食品

プロバイオティクスに限らず、様々な食品が出回っていますが、その食品の健康に対する信用性の格付けがあり、それが特定保健用食品(いわゆるトクホ)や機能性表示食品です。前者は人を対象とした試験で有効性や安全性が確認され科学的根拠があり、消費者庁の審査で認可を受けた食品で、後者は消費者庁の審査を受けていないものの、科学的な根拠が示されているものです。したがって、どんな作用で特定保健用食品や機能性表示食品の扱いになっているのか、消費者が食品を選ぶ際の一つの目安になると思います。

 

●感染症の予防効果があるプロバイオティクス

二重盲検ランダム化比較試験という最も信用度の高い臨床研究で、風邪、上気道炎、インフルエンザのいずれかにおいて、単独で予防効果が認められた乳酸菌、またはビフィズス菌を調べてみました。ここに示すのは英文にして報告されているものだけです。

このうち、●で印をつけたものが、日本で売られているもので、菌名の下に主なメーカーとヨーグルト(乳製品)名を載せてあります。

 

●ビフィドバクテリウム ロンガムBB536

→森永 ビヒダスヨーグルトBB536(この他にも森永乳業製品が多い)トクホです

〇ビフィドバクテリウム ビフィダムR0071

〇ラクトバチルス カゼイDN-11401

〇ラクトバチルス パラカゼイCBAL74

〇ラクトバチルス パラカゼイN1115

●ラクトバチルス カゼイシロタ

→ヤクルト(この他にもヤクルト製品の独壇場)トクホです

●ラクトバチルス ブルガーリクスOLL1073-R

→明治 プロビオヨーグルトR-1(この他にもR-1製品は明治だけ)

〇ラクトバチルス プランタラムDR7

●ラクトバチルス ラムノーサスGG

→タカナシ乳業 タカナシドリンクヨーグルトおなかへGO(この他にもタカナシ乳業製品が多い)トクホです

〇ラクトバチルス ファーメンタムVRI003

〇ラクトバチルス ファーメンタムCECT5716

 

ビフィドバクテリウムというのはビフィズス菌のことで、ラクトバチルスというのは乳酸菌のことです。それぞれたくさんの菌名がある上に、菌種ごとに記号のようなアルファベットや数字がつけられてさらに細分化されているので大変わかりにくいですね。

 

今話題のプラズマ乳酸菌は、英文の臨床研究を見つけることができませんでしたが、もし知っている方がいらしたら教えて下さると幸いです。

 

これ以外にも、複数の組み合わせで予防効果が示されていたり、マウスなど動物実験レベルで免疫機能を活性化することが示されているプロバイオティクスもあります。人によって好みや求める効能が違ってくると思いますので、難しく考えずに、自分に合ったものを選んで継続して摂取することが大切だと思います。

 

次回は、善玉菌の働きを助けるプレバイオティクスについて書きたいと思います。


2020年3月26日(木)

 第149話 新型コロナウイルスに備えるために−誰にでもできる腸活の可能性パート1
投稿:院長

ヨーグルトや乳酸菌飲料、食物繊維などは、一般的に健康によい食べ物として漠然と考えられていますが、その効果は便通や便の性状を改善させるだけではありません。

 

一般的に、「適切に摂取することで人の腸内環境を改善し、健康に有益な働きをする微生物」をプロバイオティクス(※)と呼び、「腸内に定着している細菌を活性化することにより、摂取した人の健康に有益な働きをする食品」をプレバイオティクス(※)と呼びますが、近年、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスや、オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクスが感染症に関わる免疫機能に影響を与えているということがわかってきました。

 

10の研究を解析した論文では、プロバイオティクスを継続的に摂取すると、上気道炎のエピソードが有意に減少することが明らかとなっています(少なくとも1回のエピソードに対するオッズ比0.58

 

また、12の研究を解析した論文では、インフルエンザワクチン接種を行う前に、プロバイオティクスまたはプレバイオティクスを経口摂取すると、摂取しない群に比べて、ワクチン接種後の抗体価が有意に上昇することが明らかとなっています(ワクチンを接種しない群に比べて、インフルエンザA/H1N120%、インフルエンザA/H3N219.5%抗体価がそれぞれ増加)

 

また、9の研究を解析した別な論文では、インフルエンザワクチン接種を行う前に、プロバイオティクスまたはプレバイオティクスを経口摂取すると、摂取しない群に比べて、ワクチン接種後に感染防御レベルの抗体価を保有する人が有意に増加することが明らかとなっています(インフルエンザA/H1N1でオッズ比1.83、インフルエンザA/H3N2でオッズ比2.85

 

一般的に、インフルエンザワクチンは、子供や若い成人でその有効率が7090%とされているのに対し、65歳以上になると3040%に減弱してしまうことが報告されていますが、これらの食品は、高齢者のワクチンの予防効果を高めることが期待されています。

 

また、これらの研究から言えることは、より長期間摂取した方がその効果が高まること(適切な量とはどれくらいなのかまだはっきりしませんが)、プロバイオティクスの種類により効果が変わってくる可能性があること、プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒に摂取した方が、単独で摂取するよりも効果が高まる可能性があることです。

 

プロバイオティクスとプレバイオティクスがどのように免疫機能に影響するのか、様々なメカニズムが考えられていますが、プロバイオティクスは、マクロファージや好中球などの貪食機能を高めたり、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化したり、IgAをはじめとする抗体の分泌を増加させたりするのに対し、プレバイオティクスは、インターフェロンγの分泌やNK細胞を活性化することが指摘されています。

 

九州大学の研究チームは、マウスを用いた実験で、腸内細菌の中でもグラム陽性菌に分類される細菌群(ちなみに乳酸菌やビフィズス菌もグラム陽性菌に含まれています)がインフルエンザに対する免疫応答に役立っている可能性があること、ある特定の腸内細菌は、肺の細胞内にあるウイルスや細菌の認識に関わるインフラマゾームと呼ばれるセンサーを活性化して免疫応答の誘導に重要な役割を果たしていることを明かにしました。

 

プロバイオティクスとプレバイオティクスが、新型コロナウイルスの感染予防に効果があるのか明らかではありませんが、これらが免疫機能を強化する働きは、一部の感染症に対してだけではないはずなので、一定の効果が期待できる可能性はあると思います。

 

マスクはいまだに不足した状態が続いていますが、スーパーに行けば、多くの種類のプロバイオティクス、プレバイオティクスが並んでいるではありませんか!

 

毎日の継続的な「腸活」で、健康的な食生活を送っていきましょう!

 

次回は、種類がたくさんありすぎてよくわからないこれらの食品について整理し、腸内細菌(腸内フローラ)に与える影響などについて考えてみたいと思います。

 

※細菌を死滅させる抗生物質のことを英語でアンチバイオティクス(antibiotics)と呼び、対抗するという意味を表すアンチという接頭語がついているのに対し、プロバイオティクス(probiotics)は賛成するという肯定的な意味を表すプロという接頭語がついて細菌と共生するという意味が込められ、プレバイオティクス(prebiotics)はプレという前へという意味を表す接頭語がついて細菌の活動を前に進めて活動を助けるという意味が込められています。


2020年3月22日(日)

 第148話 新型コロナウイルスに備えるために−誰にでもできる口腔ケアの可能性
投稿:院長

このほど、英国のランセットという有名な医学雑誌に、新型コロナウイルスに感染して中国の病院で治療を受けた入院患者の死亡の危険因子や合併症などが報告されました。

 

この中で私が注目したのが、死亡した患者の半数で細菌による2次感染を合併したのに対し、生存した患者では細菌による2次感染は1%ほどだったということです。

 

死亡した患者の98%に抗生物質が投与されていたのですが、細菌による2次感染を起こしてしまうと、その後の予後に大きく影響することがわかります。

 

インフルエンザでも、インフルエンザに罹患した後に、肺炎球菌などによる2次感染が起きやすいことや、2次感染が起きてしまうと重症化しやすいことが示されており、インフルエンザが細菌の感染を助長するような様々なメカニズムが明らかになっています。

 

それでは、その反対に、細菌の存在がインフルエンザウイルスの感染を助長するのでしょうか?

 

感染した人の細胞内で増殖したインフルエンザウイルスが細胞外に放出されて拡散する際に、ノイラミニダーゼ(NA)という糖たんぱくが必要ですが、ある研究では、人の口腔内や気道に存在する細菌の7菌種(特に肺炎球菌)にNAを産生する性質があり、この細菌由来のNAがインフルエンザウイルスの増殖を助けていることが明らかになっています。

 

ちなみに、このNAを阻害する薬剤が、タミフルやリレンザなどのNA阻害剤です。

 

さらに、インフルエンザウイルスが人の細胞に侵入する際に、ヘマグルチニン(HA)という糖たんぱくが必要なのですが、口腔内や気道に存在するブドウ球菌や歯周病菌には、このHAを活性化するプロテアーゼという酵素を産生するものがあり、インフルエンザウイルスの感染を助けている可能性が指摘されています。

 

実際の臨床研究をみてみると、日本の介護施設に通所している高齢者に対して、歯科衛生士による週1回の口腔ケアを実施すると、セルフケアを実施した高齢者に比べて、半年の期間中にインフルエンザの発症率が10分の1になったという驚くべき研究結果が報告されています。

 

そして、口腔ケアを行った群では、唾液中の細菌数、唾液中のNA活性、唾液中のトリプシンというプロテアーゼ活性の低下が認められたのです。

 

実は、新型コロナウイルスは、トリプシン様プロテアーゼを使って人の細胞に侵入することが分かっているのですが、主要な歯周病菌の一つであるジンジバリス菌は、トリプシン様プロテアーゼを産生・分泌することが明らかとなっています(この2つは同じ構造というわけではなさそうですが)。

 

さらに、本日318日、東京大学の研究チームによって、ナファモスタットという膵炎の治療を行う薬剤に、新型コロナウイルスの感染を阻害する可能性があることが発表されました。

 

ナファモスタットというのは、まさにこのプロテアーゼを阻害する薬剤のことなのです。

 

口腔内の歯周病菌を始めとした細菌が、新型コロナウイルスの感染を助長しているかどうかいまだに明らかにされていませんが、様々な事実を積み重ねていくと、歯周病対策による口腔内の衛生が新型コロナウイルスの感染防御に役立つ可能性は残されていると思います。

 

さらに、忘れてはならないのが、唾液には、運動と免疫力で触れた分泌型IgA抗体や、ラクトフェリン、リゾチームなど抗ウイルス作用を持ったたんぱく質が含まれており、感染防御の最前線の働きを担っていることです。

 

年齢が進むと唾液の分泌量が落ちてくるのですが、唾液の分泌を促すために、適度な水分を摂取し、マスクで口腔内の湿度を保ち、よく噛んで食べることがとても大切です。


歯周病は、口の中の問題だけでなく、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳梗塞、動脈硬化、糖尿病、骨粗鬆症といった病気のリスクになることも明らかになってきています。

 

しっかりとした口腔ケア(※)で、自分の健康を守っていきましょう!


 ※口腔ケアのコツとしては、「歯と歯茎の間の入り込んでいる細菌を掻き出すイメージで歯ブラシを小刻みに横に動かす」、「歯と歯のすき間には歯間ブラシやデンタルフロスを使う」、「舌の表面に付着している細菌に対して歯ブラシで舌の奥から手前に向かって軽くこするように舌の表面を磨く」だそうです


2020年3月18日(水)

 第147話 新型コロナウイルスに備えるために−運動と免疫力の関係
投稿:院長

生活習慣病の改善や予防など、健康面での運動の有効性が知られていますが、免疫に対する効果はどうなのでしょうか?

 

米国の研究者の報告では、定期的に適度な運動(45分の週5回の速歩)を行うと、運動を行わない場合に比べて気道感染の回数や有症状期間が半減することが示されています。

 

これ以外にも様々な研究で、適度な運動を行うと、風邪やインフルエンザなどの感染症のリスクやインフルエンザに関連した死亡率を減らすことが示されています。

 

逆に、激しい運動は感染症のリスクを増やすことが示されており、ハードなトレーニングを行うアスリートは一般の人よりも3倍も風邪を引きやすいそうです。

 

したがって、感染症の予防においては、運動不足でも過度な運動でもない「中等度で適度な運動」が推奨されています。

 

適度な運動が感染症のリスクを減らし、激しい運動が感染症のリスクを高めることは、細胞レベルでも検証されており、特に、ウイルスの免疫で重要な働きを担っている血液中のナチュラルキラー細胞(NK細胞)や抗体(IgA)の働きとの関連が示されています。

 

このうち、粘膜や気道に分泌される分泌型のIgAは、これらの場所において感染防御の最前線の役割を担っているのですが、唾液中のIgAは、加齢とともにその濃度が減少していくことが知られています。

 

日本の研究者からは、高齢者であっても適度な運動を継続すると、3年以上にわたって唾液中のIgA濃度や分泌速度が継続して増加傾向を示すこと、逆に激しい運動を行うアスリートは唾液中のIgA濃度が低下することが報告されています。

 

さらに、感染症に対する過剰な免疫反応により、自身の臓器・組織にダメージを与えることがあるのですが、運動はリンパ球を中心とする免疫反応(細胞性免疫)と抗体を中心とする免疫反応(液性免疫)のバランスを調整する働きがあることも指摘されています。

 

それでは、適度な運動とはどれくらいの強度なのでしょうか?

 

専門書を読むと、健康な方であれば最大心拍数(220−年齢)の50%から60%の負荷(速歩程度の負荷)で30分くらい、週3回以上などが一つの目安になります。

 

また、東京都健康長寿センター研究所では、高齢者5000人を対象として、15年以上にわたって日頃の身体活動と様々な病気の有病率との関係を調査しています。

 

それによると、18000/中強度運動(速歩)を20分行うと、うつ病、認知症、心疾患、脳卒中、がん、骨粗しょう症の有病率が低くなること、11万歩〜12000歩になると、これらの病気の予防効果は8000歩と変わらなくなり、むしろ疲労による免疫力の低下をきたす可能性があるとして、研究者は18000/20分ほどの中強度運動を勧めています。


さらに、別な研究では、1日に7000歩前後歩く高齢者で唾液中のIgAレベルが最も高かったことが報告されています。


現在、新型コロナウイルスの感染が広がり、室内で過ごす方が増えていると思いますが、一部を除き、外出そのものを制限するよう求められているわけではありません。

 

人混みや換気の悪い室内を避け、春の到来を感じながら、それぞれが思い思いのコースを歩いてみてはいかがでしょうか?

 

心地よい汗や自分と対話するひと時が、新しい自分を再発見させてくれるかもしれません。

 

※運動不足の人はもっと軽い負荷から始めて下さい。また、病気を抱えている人は、くれぐれも主治医の先生とよく相談して取り組んで下さい。


2020年3月15日(日)

 第146話 新型コロナウイルスに備えるために−喫煙との関連について
投稿:院長

喫煙は、様々な病気のリスクになっていますが、新型コロナウイルスとの関連も含めてもう一度整理してみたいと思います。

 

中国で新型コロナウイルスに感染した患者さんのデータがまとめられていますが、それによると、心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、高血圧、がんなどが、死亡リスクを高める基礎疾患とされています。

 

一方、最近になり、各国の専門家から喫煙が新型コロナウイルス感染の重症化の要因になっているという指摘が相次ぎ、注目されています。

 

中国では、男性の死亡率が女性よりも3倍ほど高いのですが、その要因として中国人男性の高い喫煙率(男性は50%以上、女性は数%)が挙げられています。

 

また、中国の病院に入院した患者78人のデータでは、やはり、喫煙歴のある人は重症化する割合が有意に多かったという結果でした(オッズ比14

 

実は、新型コロナウイルスは、肺胞のアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)という受容体を介して人体に侵入することが明らかにされていますが、ある専門家は、喫煙はこのACE2の発現を著しく増加させるという報告をしています。

 

また、喫煙はインフルエンザの発症リスク、入院のリスク、重症化するリスクをいずれも高めることが明らかにされており、喫煙者のインフルエンザに対する抗体の減弱や、ワクチンの効果の減弱が指摘されています。

 

さらに、1日にタバコを1本吸うだけで肺炎球菌による肺炎のリスクが2倍になると報告されています。

 

喫煙とがんの危険性についても、すでにご存知の方も多いと思いますが、放射線の被ばくによるがんのリスクと比較してみると、100ミリシーベルト(※)の被ばくによる全がんの相対危険度は1.005倍とされている一方、喫煙している人の全がんの相対危険度は1.5倍程度(肺がんは3.7)とされていますので、喫煙自体が大量の放射線を浴びているのと一緒ということになります。

 

ちなみに、原発事故により住民の方が避難を余儀なくされた帰還困難区域は、「放射線の年間積算線量が50ミリシーベルトを超え、5年間を経過しても年間積算線量20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域」とされていますので、喫煙の危険性の大きさが理解できると思います。

 

この機会に、ぜひ禁煙に取り組んでほしいと思います。

 

(※)ちなみに、1回あたりのCTの被ばく線量は部位によって異なるのですが、5〜30ミリシーベルトとされています。


2020年3月12日(木)

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