仙台市若林区の診療所  医療法人社団太陽会 仙台在宅支援たいようクリニック 【訪問診療・往診・予防接種】
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院長ブログ


 第174話 昔の習慣
投稿:院長

患者さんの中には、昔、看護師をされていた方がいます。

 

看護師が、患者さんの状態の推移を記録する温度板というシートがあるのですが、ある患者さんは、自分の血圧、脈拍、体温、体調や便通など細かく記録し、セルフケアに利用されています。

 

診察では、現役さながら、きれいに書き込まれた温度板を参考にしながら、薬の調整などにとても役立っています。

 

別な患者さんは、歩行も食事のスピードもとても速いそうです。それは、病院に勤務していた頃、とても忙しく病棟内を歩き回り、少ない休憩時間の中で掻き込むように食事をしていた習慣が今も残っているようなのです。

 

そういえば、私が研修医で外科に配属されていた頃、「緊急の事態にいつでも対応できるよう食事はテキパキと済ましておくように」と先輩医師から言われたことがあります。

 

私は、今ではその忠告をすっかり忘れて(笑)、食事はゆっくりと食べるようになってしまったのですが、それぞれの患者さんに今でも残るプロ意識にいつも感心しています。

 

ところで忙しい看護師の皆さん、将来、食べ物を喉に詰まらせないよう(?)、せめて食事だけはゆっくりよく噛んで味わって食べませんか? 


2020年7月2日(木)

 第173話 魅せる
投稿:院長

ある老人施設に入所されている90歳台のSさんの肌はとてもきれいです。

 

それどころか、くりっとして大きな瞳、スッキリと通った鼻筋、小さくて真っ赤な唇・・・今も昔の容姿がイメージできるくらい端正な顔立ちをした方です。

 

ある日の診療で、施設の職員が「Sさんは、今でも自分でスキンケアを欠かさないんですよ」と、今もSさんが使っているたくさんのスキンケア用品や化粧品を見せてくれました。

 

話を聞くと、Sさんは昔、某総合病院の受付嬢で、その美貌に数多くのドクターが言い寄ってきたのだそうです。

 

しかし、Sさんは、軽薄なドクターではなく(?)、ドクター以外の優しい旦那さんと幸せな結婚生活を送られたようです。

 

今は、認知症が進んだSさんですが、自分を魅せるための習慣や雰囲気は今でもちゃんと残っているのですね。

 

会えばいつも優しい笑顔で迎えてくれる、そんなSさんにいつも魅せられてしまっている私です。


「Sさん、今度の診察でまた楽しくおしゃべりしませんか?」


2020年6月29日(月)

 第172話 ○○科的には・・・。
投稿:院長

私が総合病院に勤めていた頃のことです。

 

患者さんが様々な症状を訴えて各科の専門医を受診した場合、その医師の専門領域の病気の有無だけを検査して異常がなければ、「○○の症状の方ですが、○○科的には異常がありません。診察をお願いします」という内容で、私が所属する総合診療科に紹介されてくるケースがたびたびありました。


専門医にとっては、「自分の専門領域の病気だけは絶対に見逃すわけにはいかない」という意識が働き、専門領域だけの検査をするのは当然で、そんな紹介を受けた時は、「自分の腕の見せ所」と感じて診察したことを覚えています。


しかし、ある研修医に私が鑑別診断を指導したことがあったのですが、その研修医が数年後に専門医になった途端「○○科的には・・・」という言葉を当たり前のように使うようになっているのを見て、ちょっと寂しさを感じることもありました。

 

話が変わりますが、先日の訪問診療で、ある高齢の女性患者さんを診察していた時のことです。

 

私が、「どこか痛むところはありませんか?」と聞くと、患者さんが、「内科的には痛みはありません」とお答えになりました。

 

患者さんにとって私は「内科の医者」で、膝とか腰とかの痛みを訴えるのは失礼だと感じたようです。

 

○○科的には・・・」という久しぶりに耳にする言葉を、しかも患者さんから聞くなんて全く予想外でした。

 

きっと、患者さんが過去に病院を受診して、主治医の内科ドクターに健康相談した時、「内科的には異常がないので、○○科に行って相談して下さい」と言われたことがあるのでしょう。

 

私は、この患者さんに対して「内科以外の相談でも構わないですよ。外科、眼科、耳鼻科、皮膚科、肛門科・・・○○さん的に気になるところがあったら何でも良いので遠慮なく相談して下さい。あっ、産科と小児科以外でお願いします!」とギャクを飛ばしたところ、患者さんは、「歯科的」に入れ歯が飛び出すのではないかと思えるくらいの大爆笑でした。

 

お年寄りが見せる屈託のない朗らかな笑顔っていいもんですね〜。この笑顔にいつも「精神科的」に癒されている私です。


2020年6月24日(水)

 第171話 言葉の栄養ドリンク
投稿:院長

最近、すっかり起動が遅くなった私用のパソコンを買い替えました。

 

そこで、機種よりもまず、ユーザーから評価の高い中古パソコン店を選ぶことにしました。

 

それは、激しい競争の中で生き残っていくには、ユーザー目線に立って、ほかの店との違いを出して成功している店を選んだほうが、自分のニーズに合ったパソコンを提供してくれると思ったからです。

 

そこで、起動が早く、しかも、初期設定がしっかりしていて、メカに弱い私でも届いた日から簡単にセットアップできる商品を提供していること、アフターサービスがしっかりしていること、という条件で店を選ぶことにしました。

 

ネットであれこれと検索していると、東京のある中古パソコン店が目に留まり、「これは間違いない」と感じてさっそく注文して送ってもらうことにしました。

 

2日後、注文したパソコンが自宅に届き、取り扱い説明書の指示通りにセットアップしたらあっという間に起動し、サクサクと動いてくれるので大満足でした。

 

数日後、商品レビューを書いて送ったらメールが送られてきました。

 

そこには涙を誘うような次のような文章が書いてありました(カッコ内は、私の心の中のつぶやきです)。

 

開店当時は、わずかな資金と数人のメンバーだけで、小さな事務所で机を並べて、将来の夢を語り合ったのがまるで昨日の事のように思い出されます。」(夢を語り合うっていいな。小さな事務所か。うちのクリニックみたいだな・・・。)

「社会的な信用は低くく、商品の仕入れは細々と行い、思ったように商品をお届けできず・・・。次から次へと障害が立ちはだかりましたが、その苦しい出発を支えてくれたのは、周りの人たちの手助けと、お客様の声でした。」(クリニックでもいろいろと困難があったけど、ここまでやってこられたのは、患者さんや家族の皆さん、ケアマネージャーさん、訪問看護師さん、介護スタッフの皆さんのおかげだな・・・。)

「お叱りのメールには業務改善のヒントがたくさん詰まってますし、お褒めの言葉は、日頃の疲れが吹き飛ぶ最高の栄養ドリンクです。」(自分たちも、関わってくれる人たちの笑顔や感謝の言葉は、日頃の疲れが吹き飛ぶ最高の滋養強壮剤だな。)

 

もちろん、商品レビューではこんなに素晴らしいパソコンを安価で提供してくれたこのメーカーに、最高ランクの評価と「言葉の栄養ドリンク」を贈ったのでした。

 

最近、人を中傷するネットの書き込みが最悪の結果を招いてしまうという不幸な出来事がありましたが、不満足な時は中傷ではなく激励のエール(建設的な提案というヤツです)を贈り、満足した時には称賛の言葉を贈ったほうが、お互いにハッピーな気持ちになれるというものです。

 

どこかのCMではありませんが、同じ日本人同士、言葉の栄養ドリンクを贈りあって、「ファイトーイッパーツ」の気持ちで乾杯したいものですね。


2020年6月18日(木)

 第170話 フラッシュバック
投稿:院長

今日も、朝の連続テレビ小説「エール」の話題になってしまいますが、今週のタイトル「家族の歌」の中で、主人公の裕一(窪田正孝さん)の父・三郎(唐沢寿明さん)が亡くなる場面が放送されます(帰宅後にいつもオンデマンドで視聴しています)。

 

病床で、裕一が眠っている父に向って「父さんはいつも自分の味方だったよね。周りに何を言われてもかばってくれた」と語り掛けた時、テレビ画面に、子供の頃からの父との思い出がフラッシュバックのように次々と流れます。

 

この場面を見て、今年2月に亡くなったSさんを思い出しました。

 

Sさんは、とてもぶっきらぼうで、気分が乗らないと鎮痛薬を飲まなかったり、診察を拒否したり、けして「良い患者さん」ではなかったのですが、時折浮かべる愛らしい笑顔や、周囲を喜ばせようと自由が利かなくなった体でトマトを栽培する姿に心惹かれる不思議な魅力を持った方でした。

 

そんなSさんがお亡くなりになった後、ご家族がクリニックに挨拶に来てくださいました。そして、「これは父から皆さんに渡すように言われていたものです」とチョコクッキーを差し出されました。そして、その日はバレンタインデーだったのです。

 

その時、私の脳裏にそれまで一生懸命に生きたSさんとのやり取りがフラッシュバックのように蘇ってきたのでした。

 

今回、父親としての魅力を余すことなく演じる唐沢寿明さんってすごい!と感じたのですが、人としての魅力を余すことなく伝えてくださったSさんってすごい!と改めて感じています。

 

テレビでは、裕一に「お前らのおかげでいい人生だった。ありがとな」という言葉を残して三郎は旅立ちます。

 

人生を終えるとき、家族にそんな言葉を残せたらいいなと感じています。


2020年6月13日(土)

 第169話 頑張ることは・・・
投稿:院長

今月に入り、さまざまなところで自粛が解除され、以前の日常生活が徐々に戻ってきているのを感じます。

 

そして今月、いよいよプロ野球も開幕します。

 

患者さんには、年間シートを購入するほどの大の楽天ファンの方がいらっしゃり、ご自宅を訪問すると、球場で撮影されたたくさんの思い出の写真を見ることができます。

 

あともう少し・・・衰えゆく体の中で、プロ野球の開幕をどれほど待ちわびていたことでしょう!

 

話は変わりますが、現在放送されているNHK朝ドラの「エール」では、福島県出身の作曲家・古関裕而さんをモデルにしたストーリーが展開されています。

 

その中で、現在もなお早稲田大学の第一応援歌として学生に力を与え続けている「紺碧の空」の作曲を、応援団長から依頼されるシーンがあります。

 

応援団長は、作曲に気乗りしない主人公の裕一に向かって、なぜ自分が早稲田を勝たせたいのか、どうして応援歌が必要なのかを涙ながらに訴えます。

 

自分がけがを負わせてしまったせいで一緒に甲子園を目指していた親友が野球を諦めざるをえなかったこと。その親友の楽しみがラジオで早慶戦を聞いて早稲田の応援をすること。そのために早稲田を勝たせてほしいと伝えられたこと。

 

応援団長はさらに裕一に言います。「俺はそんとき気づいたとです。野球ば頑張っている人のラジオをば聞いて頑張れる人がおる!頑張ることはつながるんやって!」

 

この言葉に心を動かされた裕一は、紺碧の空を作曲し、早稲田を勝利に導くのです。

 

プロ野球は、しばらく無観客試合となるようですが、応援のないスタジアムで、純粋に「野球の音」を楽しむことができるチャンスではないかと考えています。ピッチャーの球がミットに収まる音、打球の音、アンパイヤの声、ウグイス嬢のアナウンス、ベンチからのヤジ、乱闘の怒号?・・・。

 

プロ野球選手の皆さんには「野球を頑張っている人のテレビを見て頑張れる人がいる!全力プレーは人をつなげるんです!」と声を大にして伝えたいと思います。

 

古関裕而さんは、野球やスポーツに関連した数多くの楽曲を作曲されています。

 

早稲田大学応援歌「紺碧の空」

慶応大学応援歌「我ぞ覇者」

高校野球大会歌「栄冠は君に輝く」

巨人軍応援歌「闘魂込めて」

阪神タイガース応援歌「六甲おろし」

スポーツショー行進曲

オリンピックマーチ・・・・。

 

古関メロディーを聴きながらプロ野球観戦はいかがでしょうか!


2020年6月8日(月)

 第168話 春を謳歌する
投稿:院長

2月下旬から開始した「新型コロナウイルスに備えて」の特集は5月いっぱいで一旦終了し、いつものブログを再開したいと思います。しかし、これからも、健康に関する最新の話題について、時々情報発信していきますのでよろしくお願いいたします。

 

以前、音読の効用について、このブログに書いたことがありましたが、きちんと実践されている患者さんがいらっしゃいます。

 

その方は御年100歳を超えるEさんです。

 

それでは何を音読しているのでしょうか?

 

実は、文藝春秋と週刊文春なのです!

 

100歳を過ぎて雑誌の細かな字が読めるというのもすごいのですが、世の中の話題について常に関心を失わないということが、健康長寿の秘訣なのでしょうね。

 

先日は、自粛期間中に掛けマージャンをして辞職した検事がいらっしゃいましたが、この方は、まんまと「文春砲」と呼ばれるスクープの餌食になってしまったのですね。

 

本来なら清廉潔白なはずの人(医者もそうか・・・)に伝えたいのは、100歳を超える高齢者がスキャンダルな記事を声に出してがっかりすることのないように襟を正して行動してほしいということです。

 

しかし、もしかしたらEさんは、スキャンダルまみれの日本の行く末を心配して「まだまだ自分がしっかりしなければ!」という強い気持ちが長寿を支えているのかもしれません。

 

季節は初夏を迎えましたが、Eさん、まだまだ「春」を謳歌してください!


2020年6月4日(木)

 第167話 新型コロナウイルスに備えるために−風邪に対する民間療法−
投稿:院長

※ここに記載された内容について、電話による個別の健康相談は行っておりませんので、ご了承下さるようお願い致します。

 

前回は、風邪に対する総合感冒薬について書きましたが、今回は一般的な風邪(新型コロナウイルス感染症ではない)に対する民間療法の有効性について書きたいと思います。

 

風邪の民間療法と聞くと、“まやかし”と考える人も多いかと思いますが、カナダ医学会雑誌や米国家庭医学会雑誌の総説、コクランという世界中の臨床研究を集めて解析する国際団体の総説で、この問題が大まじめに取り上げられているので紹介したいと思います。

 

ここでは、多くの臨床研究を解析する手法で効果があったものを「効果が示されている」と定義し、一部の研究では効果が示されているけど、まだ十分なデータが揃っていなかったり、全体を分析すると効果がはっきりしないものを「まだ効果がはっきりしない」と定義したいと思います。

 

【効果が示されている民間療法】

●ハチミツ

1歳から18歳の小児を対象とし、ハチミツの咳に対する効果を調べた6つの無作為化比較試験RCT)を解析したシステマティックレビューが紹介されています。

 

それによると、ハチミツを1回につき2.510ml25歳は2.5ml611歳は5ml1218歳は10ml)を寝る前に摂取すると、咳の軽減と睡眠の改善に効果を示し、その効果は鎮咳薬であるデキストロメトルファンと同等であったと報告されています。

 

そのメカニズムですが、粘膜の保護作用、保湿作用、鎮静作用によるもの、という論調が一般的ですが、はっきりとしていない点も多いようです。

 

ハチミツは、ほとんど副作用がないことが大きなメリットですが、腸管免疫が十分に発達していない1歳未満の乳児に対しては、ボツリヌス感染症のリスクがあるので勧められません。

 

●亜鉛

17RCTを解析したメタアナリシスが紹介されています。

 

それによると、成人の風邪の患者が、発症から24時間以内に、酢酸亜鉛またはグルコン酸亜鉛のトローチを14.5rから23.7rを2時間おきに服用すると、風邪症状を平均1.65日短縮することが示されていますが、小児に対してははっきりとした効果は示されていません。ただ、トローチ製剤は、錠剤やシロップ製剤に比べて味覚の異常や嘔気などの副作用が多いと報告されています。

 

亜鉛には、免疫細胞の活性化したり、炎症を抑制する働きがあることが報告されていますが、日本人のほとんどは、潜在的に亜鉛欠乏と言われています。日本では、亜鉛サプリが複数販売されていますので、場合によっては、サプリを日頃から有効的に活用してもよいでしょう。しかし、論文にあるように、123.7rを2時間おきに服用すると、1日の摂取量の上限(4045mg)をはるかに超えてしまうので、注意が必要です。

 

【まだ効果がはっきりしない民間療法】

●ヴェポラッブ

日本では、ヴィックスヴェポラップとして販売されています。カンフル、メントール、ユーカリ油が配合されており、首や胸に塗って使用し、その成分を吸入すると、咳や鼻閉を緩和するとされています。

 

2歳から11歳の小児を対象とした1つのRCTでは、1回につき510ml25歳は5ml611歳は10ml)を首や胸に塗ると、何もしない群に比べて、鼻閉(鼻汁を除く)、咳の頻度や強さ、睡眠障害を有意に緩和し、このうち、咳の強さと睡眠障害に対しても、プラセボ(偽薬)群に比べても有意に症状が緩和(睡眠障害は子供だけでなく親も)することが示されていますが、まだ、多くの研究結果を解析するために必要な十分なデータが揃っていません。また、目、鼻、皮膚に対する刺激感が強く、その忍容性には個人差があるようです。

 

●鼻洗浄

上気道炎の6歳から10歳の小児に対して、生理食塩水(3ml9ml)を点鼻して症状の変化を調べたRCTでは、鼻汁、鼻閉、咽頭痛などの症状の緩和、鼻炎薬の減量効果が示されていますが、まだ、多くの研究結果を解析するために必要な十分なデータが揃っていません。

 

●ビタミンC

7つの臨床試験を分析したメタアナリシスでは、ビタミンCの風邪症状に対する有意な治療効果は示されていません。

 

●加湿器

6つのRCTを分析したメタアナリシスでは、加湿器の風邪症状に対する有意な治療効果は示されていません。

 

●中医学(中国)の薬草治療

17RCTを分析したシステマティックレビューでは、中医学の薬草治療の風邪症状に対する有意な治療効果は示されていません。

 

以上、風邪の民間療法を紹介しました。

 

他にも様々な民間療法がありますが(子供の頃は卵酒を飲んだ記憶が・・・)、研究では効果が示されていないけれども、個人としては効果を感じているという方法もあるでしょう。

 

したがって、コストが安く副作用のない方法であれば、それを信じてやってみてもよいのではないかと思っています。

 

今回は、風邪の症状緩和に有効な方法として、ハチミツと亜鉛の摂取を取り上げましたが、私個人としては、研究の対象年齢である18歳に若返ったつもりで、ハチミツを是非試してみたいと思っています。

 

しかし、現在は、様々な感染症予防策を行っているのでまったく風邪を引きません。

 

ということで、18歳に若返るのは一体いつのことになるのでしょうか?


2020年5月31日(日)

 第166話 新型コロナウイルスに備えるために−総合感冒薬は便利な薬?−
投稿:院長

※ここに記載された内容について、電話による個別の健康相談は行っておりませんので、ご了承下さるようお願い致します。

 

風邪を引いたとき、総合感冒薬を飲んだことがあるという人が多いと思いますが、一口に総合感冒薬と言っても、薬ごとの成分に違いがあり、必ずしも同じ薬効があるとは言い切れません。

 

そこで、総合感冒薬に含まれる成分を分析し、総合感冒薬はどのような成分の組み合わせの薬なのか見ていきたいと思います。

 

【総合感冒薬に含まれる成分】

●解熱鎮痛薬

代表的な薬剤に、アセトアミノフェン、イブプロフェン、アセチルサリチル酸(アスピリン、バファリン)、エテンザミド、サリチル酸アミド(エテンザミドの活性代謝物)があり、痛みの緩和や解熱を目的として使われます。このうち、イブプロフェン、アスピリン、エテンザミド、サリチル酸アミドは、非ステロイド抗炎症薬(NDAIDs)に分類され、鎮痛作用と抗炎症作用を併せ持った薬剤です。

風邪症状に対するイブブロフェンを含んだNSAIDsの効果を調べた臨床研究では、疼痛に対して効果を示したものの、罹病期間や疼痛以外の症状に対して効果は示されていません。さらに、NSAIDsは、活動性の消化性潰瘍、アスピリン喘息の患者には使用できません。また、インフルエンザや水痘の小児に対しては、インフルエンザ脳症やライ症候群(脳症や肝障害を引き起こす病態)との関連性から、その使用が禁忌とされています。

一方、アセトアミノフェンは、風邪症状に関する臨床研究で解熱と鎮痛効果が確認され、NSAIDsにない安全性から、小児を含めた広い年代に対して汎用されている薬剤です。しかし、高用量で服用した場合、肝障害の危険性があるので注意が必要です。

 

●抗ヒスタミン薬

代表的な薬剤に、クロルフェニラミンマレイン酸、プロメタジンメチレンサリチル酸などがあり、鼻汁、鼻閉、くしゃみの症状に対して使用されます。しかし、多くの臨床研究では、風邪症状に対して単剤で使用しても有意な効果が示されていません。さらに、これらの薬剤は、第一世代抗ヒスタミン薬に分類され、脳内のヒスタミン受容体に結合し、眠気、集中力の低下、判断力の低下、認知機能の低下を引き起こすことがあり、車の運転、高所での作業、精密な作業を行う人、高齢者、小児は使用すべきではありません。さらに、抗コリン作用も併せ持つため、目や口の渇き、尿閉、便秘などの原因になることもあり、特に隅角閉塞性緑内障や前立腺肥大の人には使用すべきではありません。

 

●交感神経刺激薬

代表的な薬剤に、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリンなどがあり、これらの薬剤は交感神経に作用し、「鼻粘膜の血管を収縮させ鼻閉を改善する」、「気管支を拡張し痰の喀出を促す」などの働きがあり、多くの臨床研究でこれらの症状に対する効果が示されています。先ほど、抗ヒスタミン薬単剤では、風邪症状に対して有意な効果が示されていないと書きましたが、抗ヒスタミン薬を交感神経刺激薬と併用すると、鼻閉症状や咳の緩和につながることが示されています。しかし一方で、交感神経の刺激により、心拍数、血圧、血糖値の上昇などをきたすこともあり、心臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症を持つ人は注意が必要です。

 

●鎮咳薬

麻薬成分が含まれるジヒドロコデイン、非麻薬性のデキストロメトルファンなどがあります。コデインは広く使用されていますが、多くの臨床研究で風邪に伴う咳に対して有意な効果が確認されていません。また、その麻薬成分のために、便秘、眠気、嘔気、喘息の悪化などに注意が必要になります。一方、デキストロメトルファンは、咳に対して効果があるとする研究結果もあれば、効果がないという研究結果もあり評価が分かれています。また、海外ではその乱用が問題になっており、高用量で服用した場合、幻覚、頻脈、高血圧、けいれん、意識障害などの症状を引き起こすことが報告されています。

 

●去痰薬

アンブロキソール、カルボシステイン、グアイフェネシン、リゾチームなどがあり、前3者は気道分泌を促進し、リゾチームは粘性の気道分泌物を分解し、痰の切れを改善する働きがあります。風邪症状に関する臨床研究では、はっきりとした効果が示されているわけではありませんが、他の薬剤に比べて副作用が少なく、市販の総合感冒薬の成分の一つとして広く使用されています。しかし、リゾチームは鶏卵アレルギーの人には注意が必要です。

 

●無水カフェイン

ほとんどの総合感冒薬には無水カフェインが入っており、血管を収縮することで、頭痛を緩和します。また、脳の覚醒を促し、眠気や倦怠感を改善する働きがあります。しかし、繰り返し摂取するとカフェイン依存を来すことがあり、大量摂取で動悸、頻脈、不整脈、不眠、不安などの中毒症状が現れることがあります。

 

【各総合感冒薬の成分】

医療機関でよく処方されるぺレックス配合顆粒とPL顆粒の成分を比較してみます。

 

ぺレックス

PL

サリチル酸アミド(解熱鎮痛)

アセトアミノフェン(解熱鎮痛)

無水カフェイン

クロルフェニラミンマレイン酸

(抗ヒスタミン)

 

プロメタジンメチレンサリチル酸

(抗ヒスタミン)

 

これを見ると、ぺレックスもPLもアセトアミノフェンとサリチル酸アミド(NSAIDs)の2種類の解熱鎮痛薬が入って、解熱鎮痛効果を高めているのがわかります。また、それぞれ、無水カフェインと種類の違う抗ヒスタミン薬が入っていますが、交感神経刺激薬や鎮咳薬は含まれていませんので、主に発熱、頭痛、咽頭痛、鼻汁、後鼻漏に伴う咳(鼻汁が喉に刺激を与えて咳が誘発される病態で、気管支で誘発される咳とは機序が異なる)などの症状を緩和することを目的とした薬剤であることが分かります。

 

次に市販されている代表的な総合感冒薬の成分を比較してみます。

 

エスタックイブ

新ルルA

パブロンS

ベンザブロック

アセトアミノフェン

(解熱鎮痛)

 

 

イブプロフェン

(解熱鎮痛)

 

 

クロルフェニラミン

(抗ヒスタミン)

 

 

フマル酸クレマスチン

(抗ヒスタミン)

 

 

メチルエフェドリン

(交感神経刺激)

 

フェニルプロパノールアミン(交感神経刺激)

 

 

 

ジヒドロコデイン

(鎮咳)

ノスカピン

(鎮咳)

 

 

 

塩化リゾチーム

(消炎・去痰)

 

 

塩酸ブロムフェキシン

(去痰)

 

 

 

無水カフェイン

 

これを見ると、市販の総合感冒薬の方が、病院で処方される総合感冒薬に比べていろんな種類の成分が入っていることがわかります。特に、咳や痰などの気管支由来の症状を緩和する交感神経刺激薬や鎮咳剤がほとんどの薬剤に入っているのがわかります。

 

【総合感冒薬は便利?それとも不便?】

以上、総合感冒薬に含まれる各成分の効能や、総合感冒薬に含まれている成分の組み合わせについて見てきました。

確かに総合感冒薬は、いろんな薬効を持つ成分を同時に服用できる点で便利なのですが、私個人としてはその便利さが仇となってきめの細かい治療を妨げているように感じています。以下に、総合感冒薬が「便利でない」と感じる理由を挙げておきます。

 

●風邪の症状にはっきりとした効果が示されていないものが多い

先に書いたように、抗ヒスタミン薬や鎮咳薬など、総合感冒薬の中核を担っている成分は、風邪症状に対する臨床的な効果がはっきりと示されていません。

 

●不要な成分を飲むことがある

例えば、風邪の症状でも人によって痛みが主体の人、咳が主体の人など様々ですが、総合感冒薬の成分をよく吟味しないと、痛みが主体なのに必要のない抗ヒスタミン薬を飲んでしまうことになるのです。

 

●副作用のために服用できる人が限られている

総合感冒薬の主成分となっている解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、交感神経刺激薬、鎮咳薬は、先ほど書いた副作用のために、高齢者、特定の持病を持った人、妊婦、授乳中の女性、小児(特に乳幼児には禁忌!)などには推奨されません。

 

●他の薬剤と成分が重複することがある

たとえば、普段から腰痛や関節痛のために鎮痛薬を服用している人が、風邪を引いて総合感冒薬を飲むことになったら解熱鎮痛剤が重複し、酔い止めと総合感冒薬を一緒に飲むことになったら抗ヒスタミン薬が重複することになります。さらに、普段からコーヒーやエナジードリンクを多飲する人が、風邪を引いて総合感冒薬を飲むことになったらカフェイン中毒になることさえあります。

 

私は、普段から高齢者を診察することが圧倒的に多いのですが、高齢者に対して総合感冒薬を処方することは全くありませんし、家族に対して総合感冒薬を処方したこともありません。私が「風邪」の診療で最優先していることは、風邪以外の病気をしっかり見極めること(高齢者が風邪だと訴えてもそうでないことが非常に多いため)、「風邪薬」によって余計な副作用を生み出さないことです。

 

以上の理由で、私が風邪の患者さんを診察した場合、個別の症状、持病、体質に応じて最も安全な薬を選んで処方していますし、「総合感冒薬を出してくれ!」と懇願されても処方することはないと思います。

 

ということで、総合感冒薬を処方してもらいたい風邪の患者さんは、私の診察を受けるべきではありません(笑)。

 

新型コロナウイルスの対策(マスク、手洗い、換気、消毒etcの徹底)を行うようになってから、風邪にも罹らなくなったという人も多いのではないでしょうか?

 

今後、たとえ新型コロナウイルスが終息に向かったとしても、総合感冒薬のお世話にならない健康的な生活を継続して行きましょう!


2020年5月27日(水)

 第166話 新型コロナウイルスに備えるために−気道感染症における抗生物質の使い方−
投稿:院長

※ここに記載された内容について、電話による個別の健康相談は行っておりませんので、ご了承下さるようお願い致します。

 

【抗生物質使用の適正化が必要な理由】

今回は、気道感染症における抗生物質の使い方について書いていきたいと思いますが、その前に、抗生物質の使い過ぎはどんな影響をもたらすのか整理したいと思います。

 

耐性菌の増加・副作用の増加

感染症の重症化・合併症の増加

入院の増加・入院期間の増加

死亡率の増加

医療費の増加

 

抗生物質の使用は腸内細菌のバランスを崩し(ディスバイオーシス)、その結果、個人レベルの健康に様々な形で影響を及ぼしますが、それ以外に、耐性菌の増加による上記のような弊害が問題になってきます。実際、細菌による尿路感染症や気道感染症の患者が抗生物質治療を受けると、治療後、12か月にわたって抗生物質の耐性が持続すると報告されています

 

抗生物質が最も処方される場所は、プライマリ・ケア(かかりつけや一般医療機関の外来)の現場です。ヨーロッパでは、実に80%〜90%の抗生物質は、プライマリ・ケアの現場で処方され、その大部分が気道感染症のために処方されていると報告されています。

 

そして、抗生物質の使用量が増えるにしたがって、個人レベルでも集団でも耐性菌を持つ割合が増えていくのです。

 

【急性気道感染症における抗生物質の使い方】

以上のような流れの中で、外来における抗生物質の適正使用が優先度の高い課題となり、2017年に厚生労働省抗微生物薬適正使用の手引きが発行されています。

 

この手引きでは、肺炎以外の急性気道感染症を「感冒」、「急性咽頭炎」、「急性副鼻腔炎」、「急性気管支炎」に分けて解説しています。

 

ウイルス感染症というのは、様々な場所に症状を引き起こすのが特徴です。上気道炎でいえば、くしゃみ、鼻水、咽頭痛、頭痛、咳、筋肉痛、関節痛、下痢など多彩な症状を引き起こします。インフルエンザウイルスやコロナウイルスでもそうだと思います。

一方で、細菌感染症というのは、一つの場所に集中的に症状を引き起こすのが特徴です。

喉の痛みはあるけど咳が出なかったり、逆に、咳や痰が出るけど咽頭痛はなかったりするわけです。例外として、マイコプラズマやレジオネラによる肺炎や、ウイルス感染症から2次的に細菌感染を合併した場合は、いろんな症状が出る場合もあります。

 

●感冒

感冒とは、咳、鼻汁・鼻閉、咽頭痛がどれも満遍なく存在し、重症感が低い状態で、この場合は、抗生物質が効かないウイルスが主な原因ですので、抗生物質の使用は推奨されていません。

症状は、最初の23日が症状のピークで、7〜10日の間で徐々に改善してくるとされていますが、ライノウイルスが原因の場合、鼻汁や咳は、徐々に良くなりながらも2週間程度は持続すると報告されています。しかし、徐々に軽快してくるという自然経過から外れて悪化傾向を示したり、一旦良くなった症状が再び悪化する場合は、細菌感染症の合併(新型コロナウイルス感染症の場合も一般的なウイルス感染症とは違った経過になります)を考えます。

 

●急性咽頭炎

抗生物質の適応があるのは、A群溶連菌による咽頭炎になります。先に触れたように、ウイルス性咽頭炎の場合は、咽頭痛以外に、くしゃみ、鼻汁、咽頭痛、咳、下痢などいろいろな症状が同時に、また時間差で現れるのが特徴です。

A群溶連菌が原因かどうかは、McIsaacの基準という症状のスコアで判定し、このスコアが3点以上であれば迅速検査や培養検査を行い、検査結果が陽性なら抗生物質を使用します。手引きでは、抗生物質が使えるのは、あくまで迅速抗原や培養検査が陽性の場合のみとしています。

また、伝染性単核球症というEBウイルスやサイトメガロウイルスによる咽頭炎との鑑別が重要になりますが、前頸部以外の頸部リンパ節の腫大、脾腫、白血球のリンパ球の数や異形リンパ球の割合で判断します。

さらに、喉の痛みを引き起こす重篤な病態、例えば、急性喉頭蓋炎(声帯付近を中心とする感染症で窒息の危険あり)、扁桃や咽頭周囲の膿瘍、細菌性血栓性静脈炎、心筋梗塞、動脈解離などをしっかり鑑別する必要があります。

 

McIsaacの基準を示します。

発熱38℃以上                  1

咳がない                     1

圧痛を伴う前頸部のリンパ節腫脹 1

白苔を伴う扁桃腺炎              1

年齢 314                1

年齢1544                 0

年齢45歳〜                 1

A群溶連菌による咽頭炎は、咽頭に集中的に炎症を起こしますので、咳が出なかったり、年齢が高くなると溶連菌による感染症の頻度が少なくなることが点数に反映されています。

 

選択する抗生物質は、A群溶連菌に対して100%感受性のあるアモキシシリン(サワシリン)1500rを12回〜3回内服10日間が第1選択ですが、ペニシリンアレルギーがある場合は、クリンダマイシン(ダラシン)1300mg1310日間か、セファレキシン(ケフレックス)1500r1310日間を選択します(A群溶連菌感染後のリウマチ熱の予防のために10日間という少し長めの服用期間になっています)。以前は、ペニシリンが使えない場合は、マクロライド系抗菌薬が第2選択だったのですが、耐性菌が増えて今は推奨されていません。

 

●急性副鼻腔炎

いわゆる蓄膿症です。鼻の奥にある副鼻腔に感染が起きた状態で、ウイルスと細菌の双方が原因になりえます。ただ、手引きでは、成人の軽症急性副鼻腔炎対して抗生物質の使用は推奨されておらず、中等症または重症の急性副鼻腔炎に対してのみ抗生物質の使用が推奨されています。

 

急性副鼻腔炎の重症度のスコアリングは、以下のように臨床症状と鼻腔所見に分かれています。

鼻漏(頻繁にかむ頻度) 時々鼻をかむ1点、頻繁に鼻をかむ2

顔面痛・前頭部痛    痛みがあるが我慢できる1点、鎮痛剤が必要2

鼻腔所見での鼻汁や後鼻漏 粘膿性少量1点、粘膿性中等量以上2

以上の総得点で、13点が軽症、46点が中等症、78点が重症と判定されます。

 

この他、細菌性の急性副鼻腔炎を疑う症状として、症状が710日以上続く場合、感冒などの上気道炎がいったん軽減してから、膿性鼻汁、鼻閉、顔面や前頭部の自発痛または圧迫感や圧痛が出現した場合です。

 

選択する抗生物質は、主な原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ桿菌(インフルエンザウイルスとは全く違う細菌です)を想定して、ペニシリン系抗菌薬のアモキシシリン(サワシリン・パセトシン)1500rを13回内服5〜7日間が第1選択ですが、ペニシリンに対する耐性菌が想定される場合は、アモキシシリン1250r1357日と、アモキシシリンにクラブラン酸を配合したオーグメンチン配合錠250RS375r)1357日を併用したりします(オーグメンチン&アモキシシリンを略して、バトミントンのペアのように“オグサワ処方”と呼んだりします)。

 

もし、ペニシリン系抗菌薬(βラクタム系)に対してアレルギーがある場合、やむなくフルオロキロノロン系のレボフロキサシン(クラビット)500r1157日、もしくはガレノキサシン(ジェニナック)400r11回5〜7日を使用します。

 

ちなみに、小児(6か月〜12歳)の急性副鼻腔炎、急性中耳炎、溶連菌性咽頭炎の患者30159人に対して、狭域抗菌薬(ペニシリン・アモキシシリン)と広域抗菌薬(アモキシシリン・クラブラン酸・セファロスポリン・マクロライド)の効果を比較した無作為化比較試験がありますが、両群とも初期治療に失敗した割合に有意差はなく、広域抗菌薬群においてQOL(生活の質)のわずかな低下や患者報告の副作用が有意に多かったとしています。

 

●急性気管支炎

急性気道感染症のうち、咳を主体とする症状を呈し、副鼻腔炎や肺炎が除外された病状を指します。

手引きでは、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない急性気管支炎に対しては、百日咳を除き抗生物質投与を行わないことを推奨しています。

 

ちなみに、18歳以上の急性気管支炎の患者3108人を対象に、抗生物質(アモキシシリン)を使用した群とプラセボを使用した群に分けてその後の症状の調査を行う無作為化比較試験が実施されていますが、症状の持続期間、重症度とも両群に有意差はなかったと報告されています。しかし、新たな症状の出現や症状が悪化した割合が抗生物質群15.9%、プラセボ群19.3%と、抗生物質群で有意に低かったのですが、その一方で、抗生物質群では、皮疹、嘔気、下痢などの副作用がその利益以上に多く、報告者は急性気管支炎の患者に対して抗生物質の使用は推奨されないとしています。

 

急性気管支炎の場合、肺炎との鑑別がとても大切になりますが、38.6℃以上の発熱、脈拍100以上、呼吸数20/分以上、酸素飽和度94%以下の一つでも当てはまれば、肺炎を疑って胸部レントゲン撮影を行うことが推奨されています(聴診器で痰が絡むような呼吸音を聞き取った場合や医師としての直感でレントゲン撮影を行う場合もあるでしょう)。

 

成人の百日咳は、14日以上続く咳に加えて、顔を真っ赤にして激しく発作的に咳こむ場合、最後にヒューと音を立てて息を吸う咳発作がある場合、咳込み後に嘔吐する場合、無呼吸発作がある場合のいずれか一つが当てはまる場合に疑い、鼻腔、咽頭などから検体を採取して病原体を同定する検査、PCR法による遺伝子検査、採血による抗体検査のいずれかを行い、陽性の場合に確定診断となります。

 

抗生物質は、マクロライド系薬剤(クラリスロマイシンやアジスロマイシン)などが第1選択となります。

 

ただ、この流れで抗生物質を投与しても、治療のタイミングが遅すぎて、咳の軽減には有用ではなく、あくまでも除菌をして他人への感染を予防するという意味が大きいという点に注意が必要です。

 

以上、急性気道感染症で抗生物質を使用する場合は、ペニシリン系薬剤の使用が第1選択として推奨されています。

 

新しい抗生物質が次から次へと登場してくるにしたがってペニシリンは過去の薬というイメージが定着してしまったのですが、今も健在なわけです。

 

特にアモキシシリン(サワシリン)は、腸管からの吸収率(生体利用率)が90%以上で、副鼻腔や喀痰への移行性も良好で、もっと見直されても良い抗生物質と言えます。

 

ちなみに手引きでは、広く処方されてきた第3世代セファロスポリンは、耐性菌を増加させたり、生体利用率が低いため、急性気道感染症には原則使用しないとしています。

 

以下に第3世代セファロスポリン各薬剤の生体利用率を紹介します。

セフポドキシムプロキセチル(バナン)50

セフィキシム(セフスパン)31

セフニジル(セフゾン)25

セフジトレンピボキシル(メイアクト)14

セフカペンピボキシル(フロモックス)3040%(尿中排泄率から推測)

セフトラムピボキシル(トミロン)不明

 

せっかく内服したのに、吸収されずに腸を素通りしてうんこになって出ていってしまう薬剤が多いのです。

また、小児に対してピボキシル基を有する抗生物質を使用すると、低カルニチン血症による低血糖、けいれん、脳症を引き起こすことがあるとされています。

 

抗生物質を使う場合は、ついつい浮気してしまったけど、昔の恋人(今の配偶者?)と、もう一度よりを戻すような気持ちが必要のようです。


2020年5月22日(金)

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