仙台市若林区の診療所  医療法人社団太陽会 仙台在宅支援たいようクリニック 【訪問診療・往診・予防接種】
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院長ブログ



 第88話 3つのバランス


投稿:院長

古代中国の思想家・孔子の言葉を編纂した論語の中に、「知仁勇」という言葉があります。

 

「知」とは、いわゆる学問をすることにより得られた知識や知恵のことを指します。

「仁」とは、人のことを思いやる心、共感できる心のことを指します。

「勇」とは、何事も果敢に挑戦するチャレンジ精神を指します。ただし、結果を顧みない無謀な勇気ではなく、結果を出すための勇気です。

 

一方、心理学では、知仁勇に相当するものとして、カントによって「知情意」が提唱されています。

 

「知」とは、知性のことで、知識を活用し、物事を考える能力のことを言います。

「情」とは、喜び悲しみ怒りなどを心で感じ取ることを言います。

「意」とは、意欲や精神力など、決断するための意思のことを言います。

 

この3つはお互いに関係しあっており、人が何かをなすときには、このバランスが大切です。

 

例えば、

知が強すぎると、自分の利益ばかり追求するようになるかもしれません。

情が強すぎると、感情に流されて冷静な判断がつかなくなるかもしれません。

意思が強すぎると、他者の意見を聞かず自分の主張ばかりを押し通すようになるかもしれません。

 

ものごとが上手くいかない時は、この3つの要素のうち何かが不足しているのかもしれません。

 

パナソニックの創業者である松下幸之助さんは、知情意の調和を図り、かつ高めていくことが人間性を向上させると述べています。

 

私は、クリニックにとって必要な3つの要素を、「知識」「思いやり」「行動」に置き換え、さらに、「創意工夫」が必要だと考えています。

 

あっ、さらに、安心、安全、改善、連携、協働、継続・・・。

 

考えれば考えるほど、果てしなく長い理想への道のり・・・。




2019年8月6日(火)


 第87話 幸せの境地


投稿:院長

100歳を過ぎる超高齢者をセンテナリアンと呼びますが、私が今まで担当したセンテナリアンの方に共通するものは、時間がとても穏やかに流れているということです。

 

今の体調はどうですか?

「上々です」

食事はおいしいですか?

「おいしいです」

幸せですか?

「皆が良くしてくれるのでとても幸せです」

心配なことはありますか?

「ありません」

 

こんな風に、いろいろ質問してもポジティブな答えしか返ってきません。

 

そして、幸せの根源にあるものは人やものに対する感謝です。

 

そんな超高齢者が醸し出す雰囲気が、穏やかに時間が流れる空間を作っています。

 

現代人は時間に追われ、日常何気ない出来事に気づかないまま通り過ぎてしまっているかもしれません。

 

「たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見るとき」

 

江戸時代の歌人・橘曙覧(たちばなのあけみ)が歌集「独楽吟」の中で詠んだ句です。

 

この歌集に収められている句はどれも「たのしみは」で始まるのです。

 

幸せとはその大きさではなく、日常の小さな変化の中に楽しみや感謝を感じ取る心のありかたが大切なのだと教えてくれます。

 

道端に咲いた小さな花、木々の緑、透き通った青い空、患者さんの笑顔、ちょっぴり点数が上がった子供達の答案用紙・・・。

 

私達も100歳を前にして、センテナリアンの境地を是非体験してみたいものですね。



2019年8月2日(金)


 第86話 元気のバロメーター


投稿:院長

患者さんの中には、障害のために自分の気分や症状を言葉にして上手に訴えられない方も少なくはありません。


例えば、高齢者の場合、体調が良い時に見せる言葉や行動、仕草は患者さん一人一人で違っており、普段の診療ではそんな「元気のバロメーター」を確認するように心がけています。

 

そんな元気のバロメーターを具体的に挙げていくと・・・。

 

Aさんの場合、最近の調子を聞いた時に、「調子が悪いのは財布の中身」といつもの調子で返ってきた時(頭の中身はユーモアが詰まっています!)。

 

Bさんの場合、「嫁の運転する車に乗った時にタイヤが脱輪して腰の痛みが始まった・・・」と40年前の出来事をいつもの調子で話し始めた時(“頭の痛い”お嫁さんです・・・)。

 

老人施設に入所しているCさんの場合、診察中に職員の詰め所に歩き出して、詰め所に置かれているチョコレートをいつもの調子でおねだりする時(職員のダイエットに貢献しています)。

 

Dさんの場合、「今の人は年寄りをいたわる気持ちに欠けている!」といつものように熱弁を振るう時(今の人の中に自分が入っていないことを祈るばかり・・・)。

 

Eさんの場合、「どうもご苦労さん」といつものようにねぎらいの言葉を掛けてくれる時(この言葉を聞くとホッとした気持ちになります)。

 

Eさんの場合、ベッドの脇にあるごみ箱に、カップ麺の空の容器がいつものように捨てられている時(見て見ぬふりをする私・・・)。

 

Fさんの場合、新聞のテレビ欄のグルメ番組に、いつものようにピンクのマーカーが付けられている時(本物の料理も食べられますように・・・)。

 

Gさんの場合、聴診器を当てた瞬間に「バカヤロー!何をするんだ!」と怒り始める時(聴診器で増幅されたバカヤローの言葉を聞いて安心している私です)

 

Hさんの場合、私のおやじギャクをいつものように声に出して笑ってくれる時(他の人に白い目で見られることがあってもHさんだけは私の味方です!)

 

ちなみに私の元気のバロメーターは、「今日の自分のおやじギャクは冴えてるな〜」と自己満足で勝手に思い上がっている時です。



2019年7月30日(火)


 第85話 趣味を語ろう!


投稿:院長

「趣味探し 定年前の 大仕事」

 

サラリーマン川柳2019に投稿され、優秀100選に選ばれた作品です。

 

特に男性は、定年を迎えると外出する機会がめっきりと減り、自宅に閉じこもりになりがちです。

 

そんな時、助けになってくれるのが趣味。

 

先日、タクシーに乗る機会があり、運転手さんと趣味の話題になりました。

 

この運転手さんの趣味はなんと熱気球。

 

休日になると、仲間たちと各地の練習会や大会に出かけ、楽しんでいるのだそうです。

 

熱気球には、気球の立ち上げ、操作、着地の誘導、回収、メンテナンスなどチームワークが必要とされ、また、高所に堪えられる身体作りのため、普段の健康管理が欠かせません。

 

「普段、高所は苦手なのですが、熱気球に乗ると高い所も平気になるから不思議なものです」

 

運転手さんは、熱気球にかける男たちのロマンを楽しそうに語って下さいました。

 

それにしても、話にも熱がこもりすぎて肝心のタクシーの運転が「上の空」になってしまわないか少しハラハラしてしまいました。

 

ここで、運転手さんの話から見えてくる理想的な趣味について考えてみました。

 

それは、心から楽しめて生きがいになること、利害関係がなく助け合える仲間がいること、適度に頭や体を使うこと、健康管理のモチベーションになること、予算が家族の承認を得ていること、そしてなんといっても、趣味の話題になると少年のように目を輝かせながら延々と話ができることです!

 

人が楽しそうに自分の趣味について語っているのを聞くのは楽しいものですね〜。

 

実は、患者さんの中にも、自分の趣味の話をしたくてうずうずしている方がたくさんいます。

 

私の場合、普段の診療で、患者さんの趣味の話を聞くのが趣味・・じゃなくて仕事の一つになっています。



2019年7月26日(金)


 第84話 思いを寄せる


投稿:院長

721日は参議院選挙の投票日でした。

 

候補者の皆さんは様々な公約を掲げますが、公約以外に私が知りたいことの一つに、「どのような健康管理(セルフケア)を行っていますか?」ということです。

 

候補者のセルフケアを聞いて何の役に立つの?と思われるかもしれませんが、セルフケア能力は、個人の充実感、幸福感、生きがいと密接に関係しており、判断力、問題解決能力、遂行能力のバロメーターになると考えているからです。

 

また、自分の心身が健全で充実していないと、政治家として人に対して思いやりのある政務をこなしていくことは難しいと思います。

 

ということで、政治家の皆さんには、弱者に寄り添った政策を実現するためにも、自分の健康に対しても思いを寄せてほしいと思います。

 

また、有権者としては、低い投票率がとても残念でなりません。

 

投票しない理由はいろいろあるでしょう。

「自分には関係ない」

「自分が投票したからといっても何も変わらない」

「投票したい人がいない」

 

でも、有権者として過去・現在・将来の人々に対してもっと思いを寄せてほしいと思います。

 

今の日本の民主主義や選挙制度が実現するまでに犠牲となった多くの人々のことを。

今も民主化実現のために戦っている世界中の多くの人々のことを。

障害を抱えて選挙に行きたくても行けない人々のことを。

将来の日本を背負っていく子供達のことを。

 

ということで、私は自分の子供達を投票所に連れていくことにしていますが、チコちゃんの大好きな子供達は、今回の選挙で「NHKがぶっ壊れなかった」ことに安堵したようです。


※子供達は、NHKから国民を守る党のポスターに衝撃を受けていたようです。




2019年7月22日(月)


 第83話 独居を支える


投稿:院長

最近、独居の方を診察する機会が増えてきました。

 

また、家族と同居していても、家族が働きに出たりして、日中は自宅に一人で過ごしている方も多いのです。

 

このような傾向は、少子化の進行や未婚率の増加とともにますます進んでいくと思われます。

 

最近は、孤独に生きるための心の持ち方を扱った本が注目を集めていますが、1人で生活していると、他人に気を使うことなく自分のペースで過ごすことができる一方、身の回りのことが疎かになりやすいものです。


それでは、他人に対して気を使いながら生活することは悪いことなのでしょうか?

 

私は、家族の中で適度に気を使い合うことによって、行き過ぎた行動を自制したり、相手を思いやって行動することができるので、けして悪いことばかりではないと考えています。

 

孫に煙草くさいと嫌われないように禁煙してみよう。

女房にうるさく言われるから午前様はほどほどにしておこう。

家でゴロゴロしていると家族に嫌われるからちょっと散歩に出かけてみよう(笑)。

 

さらに、お互いに声を掛け合ったり支え合ったりすることで、病気を予防したり早期発見することができ、健康面では圧倒的に有利なのです。

 

事実、既婚者と比べて独身男性の寿命は817年、独身女性では715年も短くなるという調査結果も出ているほどです。


あなたの身近にいるちょっとわずらわしい存在は、実はありがたい存在なのかもしれません。


ということで、在宅ケアでは地域ぐるみでいかに独居生活の方を支えられるかが課題です。

 

独居のはずなのに、いろんな人(泥棒、押し売り、疫病神を除く)がワイワイと自宅に出入りして、家族のようにあれやこれやと声を掛け合う、そんな姿を目指したいものです。

 




2019年7月20日(土)


 第82話 「中学校」に学ぶ


投稿:院長

最近、中学生の子供が行っている通信添削で出題される国語の文章を読むことが趣味になっています。

 

問題を解いて頭の体操をすることが目的の一つではあるのですが、それ以上に様々なジャンルから質の高い文章が選ばれており、心に響く表現がたくさんあるためです。

 

その一例をご紹介します。

 

女子中学生の「まい」はクラスの中のグループに入ることに馴染めず、各グループからいじめられ孤立してしまいます。

 

自分が弱いせいだとまいは自分を責めますが、まいのおばあさんはクラス全体の不安に原因があるのだから自分を責める必要はなく、自分で転校を決めて良いのだとまいをさりげない言葉で導いていきます。

 

この時のおばあさんの言葉です。

 

「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、誰がシロクマを責めますか」

 

これは非常に説得力があります。

 

よく考えてみると、人は常に自分の「居場所」を探し求めて人生を歩んでいます。

 

学校、クラブ活動、仕事、家庭、趣味、ボランティア・・・・・自分らしく居られる場所を見つけられた人は生き生きと過ごすことができるでしょうし、そうでない人は、時には悪戦苦闘しながら自分の道を切り開いていきます。

 

そして人生の晩年には、自分を総決算できる生活の場を求めることになります。

 

それは自宅であったり、施設であったり様々ですが、自分の居場所を見つけられた人は、それだけで心穏やかに過ごすことができます。

 

在宅ケアとは、患者さんの生活する空間が患者さんにとって心地よい居場所となるようお手伝いすることなのです。

 

それにしても、学生の頃は問題を解くことばかりに一生懸命で、国語の本質が分かっていなかったと今更ながらに反省しているところです。

 

というわけで、しばらく「再入学した中学校」で学ぶことが私の心の居場所になりそうです。




2019年7月16日(火)


 第81話 支配人の条件


投稿:院長

ある老人施設で新しく責任者に就任された方が挨拶に来てくださった時のことです。

 

老人施設の責任者は大抵「施設長」とか「ホーム長」とか呼ばれるのですが、この方の名刺を拝見すると、肩書に「支配人」と記載されてあるので、思わず「高級ホテルのようでカッコいい肩書ですね!」と口走ってしまいました。

 

翌日、いつもユーモア溢れるある女性患者さんを診察していた時のことです。

 

この患者さんがいつもの口調で「私の家は天下一品です!家族が皆、私の言うことは何でも聞いてくれるからです!」と面白おかしく語ってくれました。

 

この言葉に、前日の出来事を思い出し、「まさにこの家の支配人だな〜」と感じました。

 

この患者さんは、夫や子供達に対して、何十年も「志配して(相手を思う気持ちを配り続けて)」きた結果、家族から愛される存在になったという訳です。

 

支配という言葉には、相手をコントロールするとか、独裁というネガティブなイメージがありますが、実はこの言葉には、「責任ある人が他の人達を支えて気持ちを配る」というポジティブな意味も込められているのだそうです。

 

ということで、「支配人」というのは、周囲に対する気配り、思いやりの積み重ねで生まれてくる「愛されキャラ」なんですね。

 

世の中の上司が部下から「あなたに支配されてみたい!」と思われるようになったら仕事も円滑に進むんだろうな・・・そう自分に言い聞かせる「院長」の独り言でした。



2019年7月12日(金)


 第80話 伝える


投稿:院長

79話で「孫の手」の法則を書きましたが、そもそも、哺乳類の多くは生殖年齢が過ぎると同時に寿命が尽きてしまうのですが、人は生殖年齢が過ぎても数十年以上長生きする特殊な動物なのです。

 

一体何故でしょうか?

 

それは、人には生殖による遺伝子の子孫への伝達という役割の他に、自分の子孫や後世の人々が繁栄できるよう支援するという重要な役割があるからです。

 

言い換えると、豊富な人生経験によって築き上げられたあらゆるものを後世に伝える役割があるということです。

 

例えば、孫の育児に参加することにより、育児に関わる肉体的・精神的・経済的負担を分担することができますし、さらに、子供の情緒を安定させ、他者への思いやりを育むことにつながるでしょう

 

また、社会の一員として自分の経験を後世に伝え、良き模範となり社会貢献することができます。

 

在宅医療で診察する多くの高齢者は、認知機能や身体機能に障害があり、ご自分では「役に立たない」と謙遜されるのですが、どんな方であっても、豊富な人生経験で裏打ちされた考え、技術、工夫、礼節、言葉、行動から学ぶべきものはたくさんあるのです。

 

在宅医療を通して、人から人へ脈々と受け継がれてきた人の営みを強く感じることができますし、医療者は、サービスを提供するだけでなく、多くの高齢者の生き様を心にとどめ、それを受け継ぎ、周囲や後世に伝えていく役割があると考えています。

 

私がこのブログで発信する目的の多くもそこにあるのかもしれません。

 

将来、あなたの職業(役割)は?と聞かれたら、医師ならぬ「医伝師」と答える日が来るかも(?)しれません。



2019年7月8日(月)


 第79話 孫の手の法則


投稿:院長

在宅医療では、私が勝手に考えた「孫の手の法則」というものがあります。

 

それは何かというと、たとえベッド上の生活となっても、高齢者の生活空間と孫の生活空間が重なっていると、高齢者が心身とも穏やかに生活できるという法則です。

 

孫を身近に感じることができる高齢者は、孫をあやしたり、逆に甘えられたりしながら、その成長を楽しみに生活することができます。また、祖父や祖母として役割を自覚することによって、家族の一員として生きがいを持って生活することもできます。

 

さらに、孫にとっても、「じいじ」や「ばあば」と同居することによって、両親とは一味違う優しさに触れ、またその生き様を肌で感じることによって高齢者を敬う気持ちが芽生えてくることでしょう。

 

足腰が衰えてベッド上の生活を送っている80歳代の男性Aさん宅で見た光景です。

 

3歳になるAさんのお孫さんは、まさに腕白盛りで、Aさんのベッドによじ登ったり、ベッドの上で積み木をしたり、ベッドから飛び降りたり(良い子はマネをしていけはいけません)、まさにベッドが遊びの空間になっていました。

 

子供は遊びの天才と言いますが、身の回りのものはすべて遊び道具にしてしまうからすごいものです。

 

一方のAさんですが、時々ハラハラしながら、目尻が約30度下がり、すっかりおじいさんの表情になって優しく見守っているのが印象的でした。

 

次に、90歳代の女性Bさんは、初のひ孫が生まれたばかりですが、訪問診療でひ孫の話題になると、目尻が約30度下がり、すっかり優しいおばあさんの表情になってしまいます。

 

そして、Bさんは、ベッドの上でひ孫を抱くことを目標に生き生きとリハビリに励んでいます。

 

Bさん宅でも、近い将来、ベッドがひ孫の「ジャングルジム」になることが予想されます。

 

ちょっと元気がなくなっている高齢者の皆さん、是非「孫の手」を借りてみてはいかがでしょうか!



2019年7月4日(木)

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