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 第185話 お茶の心
投稿:院長

私の実家は新潟の田舎にありますが、子供の頃、自宅に人が来るたびに「お茶でも飲んでいってください」と室内に招き入れ、客人をもてなすことが当たり前でした。

 

そして、年月が経ち、私もいよいよ中年になり、時代も風習も土地も違う場所で訪問診療を行うようになっても、患者さんやご家族から「お茶でも飲んでいってください」と声を掛けられることが少なくありません。

 

時代を遡っていくと、お茶で客人をもてなす風習は、安土桃山時代の茶人・千利休の「茶の湯」に端を発しているようです。

 

千利休は、茶道の作法や精神を「利休七則」で説いています。

 

それは、「常に心にゆとりを持ち、誠実に準備を行い、相手の気持ちを思い量りながら、お互いが最も心地よいと感じられるよう心を配る」ことであり、お茶の精神とは、単なる作法ではなく、人との出会いに感謝し、相手への尊敬を示す「おもてなしの心」にあるのです。

 

先日、高齢のAさんが自宅で転倒し、足の痛みで身動きがとれないという連絡があり、往診に駆け付けた時のことです。

 

ご家族から聞き取った転倒の状況や診察の結果から、大腿骨頸部骨折と考えられました。

 

しかし、診察の終わりにAさんは、ベッドに横になったまま穏やかな表情で「ご苦労様です。お茶でも飲んでいってください」と声を掛けて下さいました。

 

この時、脈々と受け継がれ、どんな状況に置かれても失われない日本人の崇高な心と、Aさんがこの世に生をうけてから灯し続けてきた人としての温かさに触れ、胸が熱くなる思いでした。

 

そして、何があっても長年住み慣れた自宅でとことん過ごしたい、過ごさせたあげたいという当初の気持ちを再確認し、入院せずに自宅で生活していくことになりました。

 

「お茶でも飲んでいってください」

 

何気ないこの言葉に込められた意味をこれほどまでに強く、そして深く感じたことはありませんでした。

 

Aさんの一刻も早い回復を祈りながら、またいつかAさんとお茶を楽しむ日を心待ちにしています。



2020年9月6日(日)

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