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 第94話 決断を下す時


投稿:院長

高校野球・大船渡高校の佐々木投手が、岩手県大会の決勝戦に出場しなかった問題で賛否両論が巻き起こりました。

 

出場しなかったことを批判する人達は、様々な強豪校の誘いを断り大船渡高校に入学してよき仲間と甲子園を目指した経緯や、佐々木投手の甲子園出場にかける気持ちを考えて発言しています。

 

出場しなかったことを評価する人達は、佐々木投手の肘の負担や高校野球に止まらない彼の将来性を考えて発言しています。

 

しかし、ただ言えることは、今回登板したとしても今後の活躍に影響がないのかもしれないし、登板を回避したとしても将来100%活躍できるという保証はないということです。

 

したがって、これが絶対に正しいという答えのない状況の中で、詳しい内部事情をよく知らずに、その決断を批判したり、異なった考えの人達をやみくもに批判するべきではないでしょう。

 

実は、医療にも同じような状況があり、例えば、「今、自分らしく生きることができれば人生は短くて良い」という考えの人もいれば、「できるだけ長生きして活躍したい」という考えの人もいて、たとえ病状が同じだとしても、まったく治療方針が異なってしまう場合もあるのです。

 

ただ、一つ言えるのは、誰かのために重大な決定をする場合、個人だけで決定しないということです。

 

医療では、治療方針を決定するために、患者さんやご家族、医師、看護師、ケアマネージャー、薬剤師、リハビリスタッフ、介護士など、多職種によるケア会議が開かれることがあり、そこでは本人の考えや希望、医学的適応、QOL(生活や人生の質)、患者さんを取り巻く家族や社会的背景など様々な観点から話し合いが行われ、治療方針を丁寧に確認していきます。それは、患者さんの人生を左右する大切な決定を個人に委ねたりせず、皆で決定することで、喜びや悲しみを分かち合うだけでなく、その心理的な負担を減らす効果もあります。

 

高校野球に話を戻しましょう。

 

全国から注目を集める豊かな才能を持った選手が決勝戦に出場しないという決断をした監督の重責は相当なものだったはずです。

 

さらに、佐々木投手は、まだ未成年ということも考慮しなくてはいけません。

 

したがって、佐々木投手と監督以外に、両親、校長先生、佐々木投手をよく知るスポーツ生理学に詳しいトレーナー、医師、専門家を交えて、様々な角度から事前に話し合いを行うことも一つの方法です(実際にあったのかもしれませんが)。

 

そして、それにはピッチャーの肘や肩の負担を示す徴候、投球数や登板間隔など様々な状況と故障との関連を集めたデータなど、科学的な根拠も欠かせないでしょう。

 

今回いろいろありましたが・・・この問題が、より良い高校野球のあり方について再考するきっかけになったことは大いにプラスに捉えたいと思います。

 

そして何より、佐々木投手がプロ野球の甲子園のマウンドで躍動する姿を早く見てみたいものです!

 

えっ、もし私が佐々木投手のスポーツドクターだったらどんな決断を下したか?

 

あまりに重責なので遠慮しておきます(笑)。



2019年8月27日(火)
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